流行から約5年、いかにして「VTuber」は市民権を得たのか 5つのポイントで振り返る概略VTuber史

5つの要点で振り返る「概略VTuber史」

“三次”から”二次”へ ライブ配信が中心に

 もしも、現在のSNSで「バーチャルYouTuberは3Dであるべきだ」「配信をするバーチャルYouTuberはバーチャルYouTuberではない」と意見を唱えている人物を、見かけたらどう思うだろうか。おそらくVTuberを目にしたことのある人であれば「この人は何を言っているんだろう」と思うか、興味を示さないことだろう。なぜならば、現在のVTuberシーンにおいて、アバターに「Live2D」と呼ばれる2Dグラフィックのモーフィングソフトウェアを利用して生配信をおこなうことは、ごく一般的な活動スタイルとなっているからだ。

しかし、2018年初頭はそうした議論がTwitterのハッシュタグ「#VTuber学会」 をはじめ、度々起こっていた。要因は他ならず、げんげん(源元気)やにじさんじの出現にあった。

 げんげんは2018年1月10日より活動を開始したVTuberだ。ファンから「世界線リセマラ男」という愛称で呼ばれるように、動画投稿をするたびに毎回異なる衣装や背景設定で登場し、“死亡フラグ”(※)を立て、そのフラグを回収する様子が人気となっていた。

(編注:「死亡フラグ」=映画や創作において、登場人物の死亡を予期させるお約束展開、その起こりを示すネットスラング)

 その一方、げんげんは当時としては珍しい2Dアバターを使用しており、さらには数の少なかった男性VTuberという側面を持っていた。そのため、バーチャルYouTuberファンコミュニティの間では、げんげんがバーチャルYouTuberであるか否か、ということについて賛否両論わかれていた。

げんげん初めての動画投稿ヽ( ´▽)ノ

 そして、Live2Dを利用するVTuberをコミュニティが徐々に受け入れる決定打となったのが、VTuberグループ・にじさんじの登場にあったように思う。

 2018年2月7日、にじさんじの一期生となる月ノ美兎がYouTubeでデビュー。洗濯機の上にPCをおいて配信するなど、学級委員を務める女子高生というキャラクターからは連想できない、ギャップのある個性的な振る舞いが注目を集める。さらに、それらの活動をまとめた動画「10分間でわかる月ノ美兎」を投稿すると、瞬く間に多くのファンを獲得、その影響は月ノ美兎個人にとどまらず、にじさんじというグループ全体にまで波及した。

10分で分かる月ノ美兎【にじさんじ公式】

にじさんじ・JK組がVTuber界にもたらしたもの  月ノ美兎、静凛、樋口楓、それぞれの活躍

「にじさんじ」というバーチャルライバー集団をご存知だろうか? VTuberが一大旋風を巻き起こして早1年以上が経ち、業界はまだま…

 もちろん、にじさんじに所属する他のメンバーも高いポテンシャルをもっており、事務所全体で人気を集めはじめる。後にはライブ配信をメインに活動するVTuberも登場し、そのスタイルが一般化し始めたことで、VTuberによるライブ配信の台頭がはじまった。

ホロライブ台頭 そして海外へ波及

 さて、2018年から2019年頃にかけて2Dモデルとライブ配信が台頭し始めたVTuberカルチャー。この時期には電脳少女シロが所属する.LIVEの「アイドル部」や、「バーチャル蟲毒」とも呼ばれ物議を醸したピクシブ・ツインプラネット・SHOWROOMによる「最強バーチャルタレントオーディション極」をはじめ、配信を中心としたVTuberが数多くデビューした。

 少し遅れて白上フブキを筆頭に、ホロライブもVTuberグループとして人気を集めはじめ、2019年12月にホロライブ4期生が登場すると勢いを加速させた。

 少し遡ってその数か月前、当時大人気だった複数のVTuberやグループが大規模な炎上とトラブルを起こしており、一部のVTuberファンコミュニティは危機に至っていた。こうした背景もあり、ホロライブに多くの視聴者が流れ込み、結果的にVTuberグループの人気番狂わせを起こしたのだ。

 そうしたシーンの移り変わりの中で、現在は卒業してしまったが、ホロライブ4期生に所属していた桐生ココが、バイリンガルであり英語が堪能である特技を活かし、海外ファンを獲得。また、桐生ココによる朝のライブ配信企画「あさココLIVE」は他のホロライブメンバーや海外のVTuberにまつわるエピソードの紹介を中心としており、グループ全体の人気を上げ、業界のけん引役となった。

 さらに、2020年に入るとホロライブの海外向けグループ、ホロライブENが始動。日本向けの活動が中心だったホロライブの人気を海外にも広める確たる道筋が出来た形だ。中でも、EN1期生のがうる・ぐらの人気は急激な伸びを見せ、当時VTuber初となるチャンネル登録者数300万人を突破した。

VTuber史上初のYouTube300万人登録者を達成 「世界一キュートなサメ」がうる・ぐらが繰り広げる“最先端の国際交流”

2017年9月のスタート以降、様々なメンバーの活躍や大規模なライブイベントの評判などで人気を拡大し、現在ではYouTubeの累計…

 なお、海外との繋がりそのものでいえば、キズナアイが日本ではなく、韓国など海外を中心に人気になっていた時代もあるほか、電脳少女シロが英語で動画を投稿していたり、英語が堪能なVOMS Projectの天野ピカミィ、中国圏では神楽めあやVTuberグループ・Overideaなど、本稿だけでは挙げきれないほど功績をもった人物やグループなどがいる。桐生ココだけがこの功績をあげたわけではなく、様々なバックグラウンドが現在のVTuberの国際化を促進させたことは補足しておこう。

VTuber・ライバーシーンを“世界”の視点から考えてみる 日本との違いは“ファンコミュニティとの交流”と現地人気の深い繋がりに?

2017年ごろからはじまった、バーチャルYouTuberのムーブメント。その勢いは国内を飛び出し、アバターを使い、あるいはそこに…

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