『ゼルダの伝説TotK』は「ものづくりが苦手な人」でも楽しめるのか?

 Nintendo Switch用ソフト『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下、『ゼルダの伝説TotK』)が大きな話題を呼んでいる。本作は発売後3日間で全世界の売上本数が1000万本を突破し、実際に遊んだ人たちからも高い評価を受けている人気作だ。

 前作にあたる『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、初週の国内売上本数が23万本ほどであった。しかし、新作の同本数は約224万本と、10倍以上の数値を記録。前作の発売時は『Nintendo Switch』がまだまだ手に入りづらい状況で、それから6年の歳月が経った現在ではかなりハードの普及が進んだというのも要因としてあるだろう。しかし、それを抜きにしても本シリーズが日本国内でも大きな人気を得た証左といえる。

 『ゼルダの伝説TotK』では、プレイヤーは主人公の「リンク」となり、広大なハイラル王国を自由に旅できる。前作からさらに探索要素が増えており、地上のみならず空に浮かぶ島や地下まで、さまざまな場所を探検できるようになった。

 さらに大きな特徴が、「ウルトラハンド」といった新アクションの追加で「自由にものを作れる部分」だ。SNSではさまざまな作例が公開されており、車やバイク、戦車や人型ロボットなどが作られており、今後も新たな“発明”が続々と登場するだろう。

 しかし、こういった光景を見て「自分では楽しめないのではないか」と不安に思う人もいるかもしれない。なぜなら、こういったものづくりにはプレイヤーの特別な能力が必要だからだ。

「ものづくり」は主ではないし、失敗してもいい

任天堂公式WEBサイトより

 かくいう筆者もその気持ちが理解できる。ブロックを自由に組み上げてものを作るゲーム『Minecraft』で挫折を味わった経験があるからだ。私はこのゲームの採掘や探索といった冒険要素は好きなのだが、いざ資材を集めて家などを作ろうとするとアイデアが湧いてこないのである。

 レゴブロックを持っていても作りたいものがなければ意味がないように、ものを作る行為には「出力のイメージ」が必要となってくる。『ゼルダの伝説TotK』に対しても、同様の不安を持つ人がいてもおかしくない。

 しかし、実際のところ私は『ゼルダの伝説TotK』を楽しめている。たしかに本作はものづくりがポイントでもあるのだが、あえてプレイヤーに不自由を強いて遊びやすくしているところが魅力でもあるのだ。

 そもそも本作には、きちんとした目的がある。行方不明になったゼルダ姫を探すため、各地の仲間を訪ねたり、あるいは強大な敵と戦うために能力を鍛えたりと、明確な「課題」があるわけだ。

 ものづくりを中心としたゲームは、たいてい目的やゲームの終わりが曖昧であることが多い。自由帳は白紙であることに価値があり、いっそのこと誘導がないほうが創造力を阻害しないのだ。しかし、『ゼルダの伝説TotK』はあくまで「アクションアドベンチャー」であり、大きな目的があったうえで、そのうちの要素のひとつとしてものづくりが存在する。

 たしかに本作では車やバイクを作れるが、別に徒歩で歩いてもいいし馬に乗ってもいい。ものづくりに失敗しても笑える体験談になるし、なにかを作って謎を解くケースでも、超長い棒を作って強引に解決するといった手法がとれる。そもそも、その謎を無視したっていいのだ。

 『ゼルダの伝説TotK』では、なにかものを作るにしてもきちんと導線があるし、いっそのことものを作らなくてもよい。ゆえに、ものづくりが苦手な人でも問題は少ないわけだ。

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