“使用写真3000枚超え”ストップモーションクリエイター・omozocの斬新な映像はなぜ人を魅了する?
ストップモーション・アニメーションというものを知っているだろうか?
静止している被写体を撮影し、少し動かしてまた撮影する。こうして撮影した膨大な写真をコマ送りにしてつなぎ合わせ、動いているかのように見せる映像のことを、ストップモーション・アニメーションという。有名な作品でいうと、『ひつじのショーン』や『PUI PUI モルカー』なども、ストップ・アニメーションの類だ。
ストップ・アニメーションはYouTubeでも発信されている。YouTube領域のなかでも、日本を代表するストップ・アニメーションクリエイターが、今回紹介するomozocだ。
mozocが投稿している動画はたった27本だが、登録者数は201万人にものぼる。(2023年5月10日時点)これは、動画1本1本のクオリティが高いことの証明ではないだろうか。今回は、そんなomozocの動画の魅力について解説していく。
ストップモーション・アニメーションは、料理をテーマに制作されたものが多い。理由としては、ストップモーション・アニメーションは写真をもとにして制作されるため、本来食材ではないものを食材に見立てて料理動画を撮ることができる。これによって、普段調理されるはずがない物体が料理になっていくという、斬新な映像をつくることができる。
omozocの動画も、料理をテーマにした動画が数多くある。だが、omozocの動画がほかのストップモーション・アニメーションとひと味違うのは、動画に“ストーリー性”があるというところだ。
omozocの動画の中で4228万回再生と、もっとも再生された「絶望サラリーマンの夜食」という動画を例に、分析していく。ちなみにこの動画には、3257枚の写真が制作に使用されている。CGを使用せずに物体を変化させていていく必要があるストップモーション・アニメーションを制作するのは、それだけ時間と労力を要するものなのだ。
「絶望サラリーマンの夜食」は、仕事に疲れたサラリーマンが帰宅すると、「お前はクビだ!」というメッセージがいくつも舞い込むところから始まる。そのメッセージを見て怒り狂った主人公が、身につけているスーツやカバンを使って、お寿司をつくってしまうというものだ。ほとんどのストップモーション・アニメーションは、撮影している物体だけを写しているものが多い。だが「絶望サラリーマンの夜食」は、サラリーマンである主人公の姿が動画内で登場するため、主人公の感情も視聴者側に伝わってくる。
スーツを破り捨てたり、メガネを叩きつける様子から、サラリーマンが怒り狂っているという感情が伝わってくるのだ。登場人物の感情を動きに乗せることで、1つの短編映画のような深いストーリーとなる。
最新作の「夢を作ろう ~ストップモーションアニメ~(字幕推奨)」では、自堕落な生活を送っている主人公に対し、タイムカプセルにしまってあったはずのミニカーが幼いころの夢を思い出させてくれるという、感動ストーリーになっている。
omozocの動画は、どの国の誰が見てもストーリーが理解できるようになっている。文字は簡単な英語くらいしか表示されず、ほとんどが映像を見れば理解できるものになっている。omozocの動画は、単なるストップモーション・アニメーションではなく、ストーリー性を乗せた新しいストップモーション・アニメーションの段階へと進化しているのだ。
これからもストップモーション・アニメーションの枠を超えた新たな作品をomozocは魅せてくれるに違いない。
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