Amazon Musicのポッドキャスト制作スタジオ 「Wondery」が日本で始動 コンテンツ責任者が語る“ポッドキャスト市場への影響”

責任者が語るAmazon Music

 2023年3月22日、Amazon Musicは同社のポッドキャスト制作スタジオ 「Wondery」を日本において始動することを発表した。

 ストーリー性が高い“没入感のある”作品作りを武器とするWondery。今後はニュースや語学コンテンツが主流である日本のポッドキャスト市場に一石を投じるような作品が生まれていくだろう。

 今回はアマゾンジャパン合同会社でHead of Japan Podcast Contentを務める柴田周平氏に、日本のポッドキャスト市場の現状やWonderyの日本始動による市場への影響などについて話を聞いた。

"没入型のストーリーテリング"によりリスナーの選択肢を増やしたい

ーーWonderyが日本で始動することで、ニュースや語学コンテンツが主流である日本のポッドキャスト業界にどんな影響を及ぼすと思いますか?

Head of Japan Podcast Contentを務める柴田周平氏

柴田:現在でも多様なポッドキャストのコンテンツがさまざまなクリエイターの方によって制作されています。我々としては『ビジネスウォーズ』に代表される没入型のストーリーテリングを特徴とするポッドキャストコンテンツが供給されることによって、リスナーのポッドキャストの選択肢の幅が広がることに期待しています。

ーー"没入型のストーリーテリング"というワードが出てきましたが、具体的に"没入型のストーリーテリング"とはどういったポッドキャストのことを指すのでしょうか?

柴田:この"没入型のストーリーテリング”を特徴とするポッドキャストとは、「ストーリーの内容」と「サウンドデザイン」の2つの面で没入感があるコンテンツのことを指します。没入感のあるサウンドに関して、Wonderyのコンテンツは"物語を語る"のではなく、"物語を感じてもらう"という表現を用います。

 たとえば、映画『ジョーズ』では、有名な「ジョーズのテーマ」が聴こえ出してからジョーズが登場しますよね。しかし、あのシーンを映像なしに音だけで聞いても、あのような緊迫感は感じられません。音だけで表現するには、ジョーズが近づいてくる波の音を足したり、遠くからジョーズが近づいてくるにつれて音がだんだん大きくなったりするなど、音響効果の工夫を加えることが必要で、その工夫によって自分がジョーズに襲われているような緊迫感を生み出すことができるのです。Wonderyでは、そういったことをポッドキャストの世界でやろうとしています。

 そのため、『ビジネスウォーズ』でも、ストーリーとして非常に引き込まれる台本を作ることを最優先にしていますが、それと同時にストーリーをイメージさせる街の雑踏だったり、アメリカの片田舎の荒涼とした雰囲気を感じさせる音響効果を取り入れたりすることで、リスナー自身があたかもその場にいるかのような気分になってもらうためのサウンドデザインにも注力しています。

ーーなるほど。では、日本のポッドキャスト業界では前例があまりない没入型のポッドキャストコンテンツの制作手法が普及するようになった場合、日本のポッドキャスト制作会社やクリエイターにどのような影響を与えることになると思いますか?

柴田:そういったコンテンツが普及することで、ポッドキャストの体験価値が向上するような影響を与えられることができれば嬉しいです。実際、日本だけではなく、世界中のポッドキャストが同じようなプロセスを経て成熟してきています。たとえば、Wondery発祥の地であるアメリカでもポッドキャストの黎明期はトーク番組ばかりだったのですが、コロナ禍以降、さまざまなジャンルのプロのクリエイターが参入したことで、劇的に質が向上することになり、多種多様なコンテンツが制作されるようになりました。それによって、リスナーが増えたと言われているので、日本でも同じような現象が起こることを期待しています。

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