連載:僕の私の「モノ語り」(第1回)
執行役員なのに担当プロジェクト1500件! Makuakeのキーパーソン・松岡宏治氏の「モノ語り」
「これまでにない仕事だからこそ、常にどうあるべきか、向き合い続けている感じですね」
次々と新しいモノを生み出している”アタラシイものや体験の応援購入サービスMakuakeのキーマンのひとり、松岡宏治さんの職種はキュレーターと呼ばれる。一般には美術館や博物館などで展示する作品の企画から運用までを担当する専門職を指す名称だが、Makuakeの場合は少々、意味合いが異なる。
「ウチの場合のキュレーターはプロジェクトの実行者と支援者のつなぎ役であり、実行者のサポート役。ある種のコンサルタント的な立ち位置になることもあります。これは部下たちにもよくいっていることですが、ここまでやるべき、というのがないから、+αでどんな色を出すかはキュレーター自身に持っていてほしいんです。自分で道を切り拓いていったほうが絶対に楽しいですから。なんか、雑誌の編集者と感覚的に近いところがあるかもしれませんね。アウトプットが違うだけで」
自身の行動基準はすべて”直感”に従うという松岡さんだが、2016年のマクアケ入社以来、続けているのが勘の言語化だ。
「落合陽一さんのデジタルネイチャー観が好きで、そのときどきで自分が感じたことをスラックで日記帳のような感じで綴っています。自分の勘を自分で咀嚼して考え続けるというか。響く言葉にはスターづけしておいて、半期に1回は振り返りますね。過去の自分と対話していると、そのときの自分から学べることって案外少なくないんです。そんな感じで思考の密度を高めています。勘を言語化しておくと、見えないものも見えてくるんですよ。それに、日常でイヤだなと感じたことをスルーしなくなりましたね。それがプロダクト側に活きています。総じて直感ですけどね。考えてみればすごくいい商品って、つくった人の思考の結晶だと思うんですよね。同時に、人間には確実に第六感があるな、とも感じています」
勘の言語化から新しいモノが生まれる
6年間続けているスラック上の”ネタ帳”には松岡さんが日常で何気なく感じた小さな課題が膨大にストックされているが、ときにはそのなかから新しい商品が生まれることも。大阪のハンドメイドシューズメーカー・サロンドグレーがつくった「bizppa」もそのひとつだ。
・bizppa
https://www.makuake.com/project/bizppa/
「当初の課題はシニア層に向けて介護シューズをつくって販路を立てていきたいということだったんです。ただ、話を聞いていくうちに木型から全部自社一貫製作できるというので、ピンときたんですよ。僕は基本的に外部での打ち合わせが多いのですが、革靴って脱ぐのがめんどくさいじゃないですか。そこで、簡単に脱げる革靴があったら便利じゃないですか? さらにオフィスではスリッパ感覚で使えたらなおいいんじゃない?と。そもそもの目的のプロダクトから変えていった例ですね。最初は僕のアイデアからスタートしていきましたけど、それをサロンドグレーさんが会社のモノ、自分たちのモノにしてくれて、脱ぎ履き自在、オフィスでは踵をつぶしてスリッパ感覚で履けるbizppaが生まれました。実際いま、僕もbizppaを愛用していますが超快適ですよ! なので、キュレーターの仕事って、実はものすごく幅広いんですよね。makuakeは売るモノの幅がとてつもなく広いので、目的に応じて自由にカタチを変えるアメーバみたいな存在です」
この日はそのほか、独自の起毛技術を活かした兵庫・加古川のインナーウェアメーカー・ワシオの超あたたかインナー「もちはだシリーズ」、ダウンより軽くて暖かいカポックの実を使った「KAPOK KNOT」のコート、本当によい道具を追求している本間製作所。さらには、”奇跡の田舎”といわれる徳島県神山町で人間の未来をつくる学校の開校を応援する「神山まるごと高専(仮称)設立プロジェクト」まで、その背景にある想いをマシンガントークしてくれた松岡さん。さすがは挑戦する人を応援する人だ。
・もちはだシリーズ
https://www.makuake.com/member/posted/258289/
・KAPOK KNOT
https://www.makuake.com/member/posted/1174195/
・本間製作所
https://www.makuake.com/member/posted/916226/
・神山まるごと高専
https://www.makuake.com/project/kamiyama-marugoto/
すべては子どもたちの明るい未来のために
常に出逢いを大切にし、ゾワっとするくらいのご縁を求めている自分がいるという松岡さんだが、その一方では想いが強くなりすぎないようにしている部分もあるという。
「プロジェクトの実行者はMakuakeを利用しようとしていて、その想いを受けて僕らキュレーターがmakuakeのリソースをどう活用するかを考えていくわけですが、人の想いに触れすぎるとうまくいかないこともあります。突き詰めれば突き詰めるほど、人の人生を背負うことになりますし、実行者さんの会社の経営面にも関わってきますしね。プロダクトが変に売れてしまっても、売れた責任も生じますし。人の人生をガラッと変えることもある仕事ですから。実はそのことで悩んでいた時期もあります。担当キュレーターとして走る切るのは簡単ですが、実は想いと理性、さらには実行者さんの経営面まで考えてすべてをバランスさせながら折り合いをつけなければならないのです」
それでも執行役員になったいまでも、喜んでプロジェクトの現場へと顔を出すという松岡さん。その原動力とは?
「大きな転機は子どもが生まれたことですね。正直、それまでは自分のためにやっていたところもあったんです。目の間の実行者さんがこういうふうになったらいいな、とか。ただ、自分に子どもができて、この子のためにどんな未来を残せるかな、というのがより身近になったんですよね。いまの一番の原動力はそこになるかな。だって、0.001%でもいいから『パパ、がんばったね』っていわれたいじゃないですか」
情熱の”キュレーター”の根源にあるのは一貫して人への想い。そこから今後も次々と新しいコト、そして新しい未来が生まれていくに違いない。
松岡宏治(マツオカ・コウジ)
株式会社マクアケ キュレーター本部 執行役員。1992年生まれ。早稲田大学卒業後、ITベンチャー企業を経て2016年、マクアケ入社。マクアケ関西支社の2人めの社員として、立ち上げに参画し事業拡大に貢献。その後、さらに3つの地方拠点を立ち上げながら、自ら全国各地に足を運んでいる。過去国内メーカーのプロジェクトを中心に1500件以上の案件を担当。2022年10月、執行役員に就任。
企業サイト
Makuake
https://www.makuake.com
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