新章『悪魔城ドラキュラ』ーー『宿命の魔鏡』から発売10年を迎えて認識させられた『メトロイド』に受け継がれしアクションゲームを貫く姿勢

『宿命の魔鏡』から受け継がれし“貫く姿勢”

そこにはアクションゲームを貫き通す姿勢があった

 そして、続編となる『宿命の魔鏡』に関しては、発売から10年経った今となって『メトロイド サムスリターンズ』、『メトロイド ドレッド』の原型になった作品という新たな価値が加わっている。

『Castlevania - Lords of Shadow - 宿命の魔鏡』オープニングムービー

 とはいえ、『宿命の魔鏡』も『悪魔城ドラキュラ』としては異端の作品になっている。任天堂公式WEBサイトの作品紹介ページには、「ゲームシステムはシリーズユーザーからの要望がとても多かった、2Dによる探索型スクロールアクションに原点回帰しております」「『悪魔城ドラキュラ』シリーズで人気のアルカード、シモン・ ベルモンドといった歴代のキャラクターも登場します」と記されていて、探索型の中でも高い人気を誇る『悪魔城ドラキュラ 月下の夜想曲』(月下の夜想曲)のような作りを彷彿させる。

 だが、実際は『月下の夜想曲』とも、それ以降の探索型シリーズとも異なる。端的に言えば、前作『ロード オブ シャドウ』を横スクロールに置き換え、探索型っぽくした内容だ。

 当然、システム周りも『月下の夜想曲』とは異なり、武器や防具といった装備品を付け替えて強化を図ったり、消費型の回復アイテムを購入して使うような要素はない。経験値が一定に達するとレベルが上昇するシステムはあるが、それによって強化されるのはプレイヤーのアクション。ステータス周りは、マップ内に隠されたアイテムを発見して強化を図る仕組みになっている。

 なので当然、敵との戦闘では力押しも通用しない。相手の動き、距離を考えながら攻撃、回避、防御を使い分ける『ロード オブ シャドウ』と似たゲームデザインであり、元祖ステージクリア型の『悪魔城ドラキュラ』を思わせるバランスになっている。

 演出面においても、音楽は雰囲気重視で、いわゆる“ドラキュラサウンド”は流れない。また、本作からは日本語ローカライズもテキスト周りの翻訳に限られ、キャラクターの音声は英語ボイス限定となり、“洋ゲー”感が一段と増している。

 『月下の夜想曲』のような内容を期待すれば、どんな反動が返ってくるかは想像に難くないだろう。だが、根本的に『ロード オブ シャドウ』を冠するだけあって、同シリーズはこれまでの『悪魔城ドラキュラ』とは違うのである。アルカードとシモンも、名前が同じだけの別人だ。「世界観と設定はそれまでの『悪魔城ドラキュラ』からリセットされている」と先に記した通りなのである。

 10年前、『月下の夜想曲』のような『悪魔城ドラキュラ』を期待したら「全然違うものだった」と、色んな意味で驚かされた人も少なくないだろう。発売前に無料の体験版も配信されたので、そちらに触れて「あれ……?」と拍子抜けしたプレイヤーもいたかもしれない。筆者も体験版を遊んで、「あ、やっぱり『ロード オブ シャドウ』だ」となったクチである。ちなみに、本作の発売から9ヶ月後にはHDリマスター版が『PlayStation 3』『Xbox 360』向けに発売されているが、あくまでもリマスターなので基本の内容は共通である。

 発売から10年が経ち、『メトロイド』2作の実績を残した今に『宿命の魔鏡』を遊んでも、『悪魔城ドラキュラ』シリーズの歴史を知るものからすれば異端さを感じることには変わりないだろう。ただ、改めて『宿命の魔鏡』を遊ぶと、この当時からマーキュリースチームが『メトロイド』を作っていたのであれば、その強みがバツグンに発揮されただろうと思えてくる部分があった。それは『宿命の魔鏡』が全編に渡り、アクションゲームの『悪魔城ドラキュラ』を貫き通しているからだ。

 「そもそも『悪魔城ドラキュラ』はアクションゲームじゃないか」と思う方もいるかもしれない。だが、『月下の夜想曲』に象徴される探索型の『悪魔城ドラキュラ』は、どちらかと言えばアクションRPGと分類する方が適切だろう。装備品の付け替え、レベルアップ、消費型アイテムの存在など、アクションゲームがそれほど得意でない人にも攻略の糸口を設けていたためだ。逆にそれをある程度縛れば、純粋なアクションゲームとして遊ぶことも可能という、間口の広いゲームデザインが確立されていたのである。

 それと比べると『宿命の魔鏡』に限らず、『ロード オブ シャドウ』シリーズは真逆の方向性となっている。それは元祖ステージクリア型の『悪魔城ドラキュラ』のものであり、純然たるアクションゲームの手法だ。

 そして、『メトロイド』はアクションゲームである。『月下の夜想曲』のような装備品の付け替え、レベルアップ、消費型アイテムなどのRPG要素がなく、全編に渡ってプレイヤーの腕前が試される。一部、装備品の付け替えやパワーアップ、消費型アイテムのあるシリーズ作も存在するが、最終的な攻略にはプレイヤーの腕前が大きくかかってくる。

 『宿命の魔鏡』も基本的にそういうゲームバランスで全編がまとめられている。それを踏まえると、『宿命の魔鏡』は後の『メトロイド』2作の原型であると同時に、マーキュリースチームのスタイルが合致して上手い方向に働いた作品といえるだろう。事実、『メトロイド サムスリターンズ』も『メトロイド ドレッド』も、一貫してアクションゲームを貫き通している。『宿命の魔鏡』の時は異端だったスタイルも、『メトロイド』なら違和感がないと言い切れるほど、自然に活かされているのだ。奇しくも雰囲気重視に一新された音楽も、『メトロイド』であれば過去作の傾向から違和感なく溶け込むと同時に、相性の良さが発揮される。

 10年という年月の経過とともに、外側から見ても『宿命の魔鏡』は『メトロイド サムスリターンズ』、『メトロイド ドレッド』の原型とみなせるようになった。そして、実はゲームの中身を見てもそうだと言い切れる見どころが揃っている。操作性の鈍さや、キャラクターのアクションの重さ、ほぼ一本道なマップデザインなど、気になる部分もそれなりには存在するが、後の『メトロイド』新作を形作った『悪魔城ドラキュラ』としては興味深い仕上がりになっている。

 その意味で『宿命の魔鏡』は、10年を迎えた今こそ、資料的にも歴史的な面でも再プレイの意義が生まれている作品といってもいいだろう。横スクロールアクションゲームであるという点からも、他の『ロード オブ シャドウ』2作以上に見所がある。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる