KDDI、ソフトバンク、ホンダ、日産――大手企業のメタバース進出・活用相次ぐ一週間。それぞれの差異に表れる個性

大手企業のメタバース進出・活用相次ぐ

 先週は大手企業のメタバース参入が多く見られた。とりわけ大々的に発表され、筆者観測範囲でも話題となったのは、KDDIの『αU (アルファユー)』だ。メタバース空間『αU metaverse』や、360度自由視点音楽ライブを楽しめる『αU live』、暗号資産ウォレットの『αU wallet』など、計5つのサービスを包括するメタバース・web3サービスとのことだ。

 筆者もとりあえず『αU metaverse』をさわってみた。操作感に多少難があるものの、スマホの画面越しに広がる世界のクオリティは悪くない。アバターのカスタマイズ幅はそこそこで、肉体よりも衣服やアクセサリーで差異をつけるコンセプトなのか、有料アイテムを含めてアイテム数は多い。自室も用意されており、まだ品数は少ないが、家具などを購入して飾ることもできそうだ。

 コンテンツの充実具合はまずまずといったところだが、手触りは悪くなく、人気アーティストやタレントとのコラボなど、コンテンツの中身は豪華ではある。スマホアプリとして展開している点からも、まだメタバースに触れたことがない層や、メタバースへ“通う”習慣が定着していない層にとって「ハレの日の場所」としてのメタバースにはなりそうだ。一方、現状ではユーザー側の自由度はさほど高くなく、「ケの日の場所」として居心地がよくなるかは今後次第、といったところだろう。

 一方のソフトバンクは『ZEPETO』に展開していた「ソフトバンクショップ in ZEPETO」の大型リニューアルを実施した。昨年6月から展開していたメタバースショップが、リニューアルによってコンテンツが増えただけでなく、チャットボットを搭載した常設アバターによるサポートが加わる。4億ものユーザーが存在するという『ZEPETO』に向けて、手堅くリーチを続けている印象だ。

 また、ソフトバンクは『ZEP』と呼ばれる2Dメタバースにも進出を発表した。『ZEPETO』とは名前が似ているが開発・運営は別だ。そして『ZEPETO』と『ZEP』の双方で、「なにわ男子」を採用したプロジェクトを展開するとのことだ。いずれにせよ、自前のプラットフォームを作ってきたKDDIとは対照的に、ソフトバンクはすでにユーザーのたくさんいる既存プラットフォームを活用する道を選んでいるようだ。

 同じく世界規模でユーザーのいるプラットフォームといえば『Roblox』が挙げられる。グッチやナイキなどの有名企業が多く進出している場所でもあるが、3月9日に進出してきたのがホンダだ。

 公式ワールド「Honda Rewired」では、同社のパワープロダクツ製品を自由にさわって遊ぶことができる。ワールド内にいるNPCの依頼を叶えていけば、「チートモード」も解禁されていくという、『Roblox』らしいゲーム性のあるワールドになっているようだ。

 また、『Roblox』ゲーム制作者向けのコンテストも開催される。パワープロダクツ製品を使ったゲームコンテンツを投稿するコンテストとなり、賞は全部で3つ用意される。企業の持つプロダクトをユーザーに提供し、コンテンツを作ってもらう、UGCが活発なメタバースならではの施策と言えるだろう。ホンダクラスの大企業がこうした施策に乗り込んできたのは、ユーザー視点からも大きな動きと言えそうだ。

 自社プロダクトを扱うメタバース施策としては、日産自動車は新規プラットフォーム『NISSAN HYPE LAB』にて、メタバース上での自動車販売の実証実験をスタートした。

 24時間、Webブラウザからアクセスできる仮想店舗がオープンし、自動車の案内に加え、スタッフによる相談、見積もり、購入契約までを行えるとのことだ。自動車のエクステリアやインテリアなどを眺めることができる「3Dシミュレーター」や、車での走行シミュレーションができる「360° ドライビングビュー」などもあり、車両をバーチャルに体験しながら購入検討できる、興味深い実験だ。

 『VRChat』向け施策も続く日産自動車だが、ユーザー認知を拡大するか、購入検討の場の提供かで、プラットフォームを適切に使い分けようとしているような印象を受ける。企業のメタバース進出は、「とりあえず進出すればOK」というわけではない。場の作成・活用・維持の全てを考えていく必要がある。大企業がメタバースをどのように使っていくか、模索はまだまだ始まったばかりだ。

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