家庭の音響体験を変える? 第2世代『HomePod』に合う・合わない使い道を検証してみた

Apple『HomePod』レビュー

 Appleの販売するスマートスピーカー、『HomePod』の第2世代が2月3日に発売された。初代の発売は2018年で、5年ぶりのアップデートとなる。当時は先んじて発売されていたAmazonの「Amazon Echo」や「Google Nest」のようなスマートスピーカーが好評を博しており、これを追う形でAppleが発表したのが「HomePod」だった。今回は第2世代『HomePod』のレビューをお届けしよう。

iPhone・iPadから簡単に設定できる

 箱を開けてみると本体と電源ケーブル、そして小さなマニュアルが入っている。いつものAppleらしい最低限の内容物だ。『HomePod』自体もとてもシンプルな製品で、上部にボリュームの上下とスピーカへの命令を司るタッチパネルがあるほかはボタン類などはまったくない。コンセントに接続すると自動で電源が入り、スタンバイ状態になるので、iPhoneやiPadで製品設定を行う。

 BluetoothがオンになっているiPhoneやiPadを近づけると設定のダイアログがポップアップするので、指示に従って設定を完了しよう。なお、『HomePod』の細かい設定やファームウェアアップデートなどは「ホーム」アプリで行うのだが、未インストールの場合は設定時にインストールを促されるようになっている。

 設定を完了し、音楽を再生してみると、小柄な筐体に似つかないパワフルなサウンドに驚いた。4インチの高偏位ウーファーが鳴らす低音は凄まじく、設置した机が震えるほど。スピーカー設置用の大理石などを別途購入すれば、こうした震えは改善されるだろう。

音楽で空間をデザインするパワフルな無指向性スピーカー

 『HomePod』の音楽再生機能にはいくつかの特徴がある。円形の本体が示す無指向性(特定の方向ではなく、360度あらゆる方向に向かって音を届ける特性)や、内蔵センサによってリアルタイムで音質をチューニングする「室内検知機能」がそれだ。また、内蔵された「ビームフォーミングツイーター」は部屋の中心に音を正確に届ける。ソフトウェアとハードウェアが密接に関わり合ってユーザーの体験を向上する、まさにAppleらしいプロダクトになっている。

 ハウスやエレクトロ、ガレージロックやヒップホップなど、さまざまなジャンルの音楽を再生してみたがいずれも破綻なく鳴らしてくれる。また「室内検知機能」もうまく働いており、部屋の隅に置いたときと中心に置いたときでは鳴り方がまるで違う。

 すこし意地悪く、部屋の隅に置きさらにスピーカーの前に障害物を置き音楽を再生してみたが、違和感のない音楽体験を楽しめた。無指向性の特性と「室内検知機能」がうまく働き、音が回り込んで耳元に届いたのだろう。この「どこに設置しても音楽体験を損なわない」という特性は家庭に置くスピーカーとしてはとても大きな利点だ。

 続いて空間オーディオも再生してみた。『HomePod』は空間オーディオに対応しており、音楽を立体的に楽しめる。Appleが公開している「空間オーディオ」のプレイリストからいくつかを再生してみた。感想としてはいずれの音楽もダイナミックに再生してくれる楽しい機能だが、『HomePod』自体が持つ「空間に対応したサウンドを再生する機能」が非常に強力なため、AirPodsやiMacでの再生で感じた「音が回り込んでくる驚き」は少し薄い。音楽体験よりも映画などを視聴する際に使いたい機能だと感じた。

 『HomePod』はステレオでも使うことができる。2台の『HomePod』を設置して、「ステレオペアとして使用」の機能を有効にすればよい。この機能も前述の空間オーディオと同じく、正確なステレオを再生してくれることに間違いはないのだが、むしろ1台で空間全体を鳴らせるスピーカーとしての性能の高さに改めて気付かされることになった。

 ステレオペア機能を最大限に楽しむなら、『Apple TV 4K』などと合わせて2台の『HomePod』をテレビの横に設置するのがおすすめだ。家庭で簡単にサラウンドコンテンツを楽しめるだろう。『Apple TV 4K』にはHDMI ARCの機能があるため、これらを活用すればテレビやゲームの音声を『HomePod』から出力することも可能だ。

 『HomePod』はリビングやキッチンなどで手軽に音楽を楽しむにはこれ以上ない性能のスピーカーであると感じた。日常的にSiriを活用するユーザーも便利に使えるだろう。スマートホーム対応家電をすでに使っているのなら、『HomePod mini』と合わせて家に数台設置するのも面白い。動画再生などにも活用するのであれば2台の『HomePod』を『Apple TV 4K』と合わせて使うのが良いだろう。ステレオはもちろん、空間オーディオの性能もフルで発揮できる。

 反面、スピーカーに「正確な音質や位相差」を求めるユーザーにはおすすめしづらい。空間に合わせて音をデザインする『HomePod』のスタイルは、こうした「正確な音」とはある種真逆の音を提案するからだ。「家の中を音楽で満たしたい」「無指向性スピーカーを試したい」といった欲求に対しては強力に応えてくれる製品だろう。『HomePod mini』からのアップデートを検討するユーザーにとっても、後悔しない選択肢となるはずだ。

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