言葉の誤用を辞書が煽る? 話題沸騰の『三省堂辞書スタンプ』制作陣が語る“振り切ったデザイン”に辿り着いた理由
言葉の正しい使い方を啓蒙したかった訳ではない
――今回の40語はどのような基準で決めたのですか?
保科:まずは実用的な言葉を収録しようと意識しました。語釈は読まない人もいるため、単語だけで会話が成立するように選びました。
――「凡人」や「動物園」などを収録した理由は?
保科:もちろんスタンプとしての使い勝手も考慮した上ですが、それらの単語は「語釈が面白い」とご評価の声を多くいただいているため収録したという面もあります。実際、これらの言葉が載っていて嬉しい、と反応いただいている方が多い印象です。やはり、語釈は辞書の大きな魅力ですので、そこに触れてほしい、気づいてほしいという思いから選びました。
――「草」や「それな」などの若者言葉も見られました。
保科:『三省堂国語辞典 第八版』では、「チル」、「それな」など最近定着した言葉を収録しています。「こういった単語も実は辞書に載っています」ということをアピールするために入れました。
――語釈で言いますと、「おつかれさま」や「了解」などでは「目上の人にも使って良い言葉」という趣旨の内容が記されていました。適切な言葉の使い方を啓蒙する狙いもあったのでしょうか?
関:そのような大層な狙いはありません。たとえば「おつかれさま」は意味をわざわざ見なくても理解できる言葉なので、語釈の中から豆知識的な内容を採用しました。「この言葉の意味を理解していない人が多すぎる! 正しくはこうだ!」と押し付けようとは思っていないです(笑)。
――ちなみに収録された単語で思い入れのあるものはありますか?
関口:特に収録する言葉のバランスは意識していたので、強いて言えば全部でしょうか(笑)。やはり、普段使いできる言葉を入れつつ、辞書の面白さを伝える言葉を選ばなければいけませんから。
――収録したかった言葉はありますか?
関口:実際に自分たちも使用していますが、「マジで!?」というようなリアクション系の言葉が少なかったです。そういった言葉を入れておくと、より使い勝手が良かったのかもしれません。
辞書は引くものではなく、押す時代に
――リリース後はSNS上で大きな反響が寄せられましたが、印象に残っている声などありますか?
関口:いろいろな反響をいただいており、ありがたい限りです。特に「辞書は引くものだったが、押すことができるようになった」という反応があり、「上手いこと言うな~」と印象に残っています。また、ご自身が持っているいろいろなスタンプを押した後に、「虚無」という単語のスタンプを押して、オチのように使っている人もいて面白いと思いました。
――「こういう使い方もあるよ」みたいな提案はありますか?
関:「ありがとう」や「ごめんなさい」など、普段言えないけど伝えたい言葉ってあると思います。可愛らしいスタンプよりも辞書スタンプのほうが、照れを隠しながらも気持ちを伝えられるのではないでしょうか。
――今後は単語を増やしていく予定などありますか?
関:一応リストアップはしていますけど、三省堂辞書スタンプはあくまで『明解国語辞典』刊行80周年のプロモーションですので、何かと絡めるかたちでリリースするかもしれません。
保科:今回は『新明解国語辞典第 八版』と『三省堂国語辞典第 八版』から単語をピックアップしましたが、今後は例えば、「いとおかし」のように古典に関する辞書から単語を集めたスタンプを出しても面白いのかな、とは考えています。
――最後に改めてどのように三省堂辞書スタンプを使用してほしいですか?
保科:そもそも、「このスタンプを売りまくろう!」と思って企画したものではなかったものですから(笑)。日頃から辞書を愛してくださっている方達への感謝の気持ちを持って、さらにはこれから辞書を愛してくださるであろう方達に向けて制作しました。辞書を身近に感じてもらえるキッカケになればと思いますので、使いながら楽しく言葉に触れていただけると嬉しいです。
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