「ChatGPT」だけじゃない? AI技術によって加速するチート業者とゲーム企業の戦い
AI技術によって加速するチート事業者vsゲーム企業の構図
しかし監視を続けていると言っても、チートを販売する業者やチーターも手口をあれこれと変えるため、実質はいたちごっこのような状態であることは否めない。あるパターンのプログラムを解析した上でプロテクトしても、時間が経てばそのプロテクトすらも解析して穴に入り込んでくる。イメージ的には殺虫剤に適応した害虫、ワクチンに抵抗性を持つウイルスに近いかもしれない。
そんな中で開発されたのが、AI技術を導入したアンチチートツールである。大まかな仕組みは、「違反プログラムの実行パターン等をAIに学習させてチート行為の検出に役立てる」というものだ。上述のオートエイムやウォールハックはもちろん、ゲーム内スコア、プレイ中のコミュニケーションデータ(テキストチャット・ボイスチャット)なども学習対象に含まれる。そうして蓄積したデータをもとにユーザーのプレイを逐次検証し、学習パターンと類似性の高いものを暫定的にチートとして検出。外部判断に基づき、チーターのアカウントBANへ繋げる……というわけだ。
アンチチート分野におけるAI技術の導入はオンラインゲームの隆盛に伴う形で進行。2018年にはマイクロソフトがチート検出にAI技術を活用し、特許を出願したことが報じられているが(Digital Trends ※3)、一個人がAI技術を用いてアンチチートツールを開発した事例もある。2019年、イギリスに住む10代の学生が「HestiaNet」と呼ばれるアンチチートツールを開発。過去数年分にわたってFPS作品『Counter-Strike: Global Offensive』のプレイデータを集積し、結果的に1万5千例を超えるチート行為を検出した(AUTOMATON ※4)。検出したチート行為がすべてアカウントBANに直結するわけではないものの、効率面や検出精度においてAIがアンチチート対策に一定の効果を上げているのは明らかだと見受けられる。
しかしチート業者も無抵抗でアンチチートツールにひれ伏しはしない。それどころか、逆にAI技術をチートツールへ組みこむ開発者も現れている。正式にリリースされることは無かったが、”タイトルを問わずにオートエイムを実現するチートツール”は発表時から注目を集め、「Call of Duty」シリーズを手掛けるActivisionが直々に開発中止を求めるという事例へと発展した(GIGAZINE ※5)また他方では、アンチチートシステムがランサムウェア拡散に悪用される被害も発生。いたちごっこと形容した通り、アンチチート分野の技術が進歩するにつれ、同じようにチート業者およびチーターも追従するように適応力を高めている。
昨今はとりわけeスポーツ市場の進歩が国内外で目覚ましく、競技性に特化したeスポーツタイトルも人気を保持している。それらの多くはネットワーク機能を介したオンラインプレイに対応しているため、チート行為の頻発も珍しくないのが実情と言えるだろう。チートの完全な撲滅は現時点で難しいものの、今後もアンチチート分野の技術研究は盛んに行われるはず。チート被害が存在しないオンラインゲームで公平性を保ったまま遊べる日を願うばかりだ。
〈出典〉
※1:https://forbesjapan.com/articles/detail/53445?s=ns
※2;https://e-words.jp/w/%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%88.html
※3:https://www.digitaltrends.com/computing/microsoft-patent-describes-machine-learning-cheat-detection/
※4:https://automaton-media.com/articles/newsjp/20191128-107650/
※5:https://gigazine.net/news/20210715-auto-aim-cheat-development-stop/