「ChatGPT」だけじゃない? AI技術によって加速するチート業者とゲーム企業の戦い

AIで加速するゲームメーカーのチート対策

 ここ最近、まるで人間のように自然な文章を作り出す「ChatGPT」(対話型AI)が話題の的になっている。理論面の詳細は省くが、従来モデルを遥かに上回る性能を誇るため、「人間の職業領域に影響が及ぶ」といった見方も大いに現実味を帯びている(Forbes JAPAN ※1)。イーロン・マスクやビル・ゲイツといった業界の巨人たちも既にChatGPTへ莫大な出資を済ませ、同サービスを運営する企業OpenAIには各方面から多大な期待が寄せられている現状だ。

ChatGPTが変える働き方 AIリスクは増加へ【WBS】(2023年1月27日)

 上記のChatGPTにくわえ、画像生成(NovelAI Diffusion)・音源合成(VOCALOID:AI)など、様々な分野で研究が相次ぐAI技術。本稿では数ある事例のうち、「オンラインゲームのチート対策」にフォーカスする。健全なプレイヤーを蹂躙するチート(行為)に対し、アンチチート分野はどのようにAI技術を導入したのか。なおシングルプレイ専用のビデオゲームでも裏技コマンド、もしくは開発側が用意したチートコード等は存在するが、本稿では”オンラインゲームにおけるチート”に焦点を当てる。

チートはユーザーとゲームを傷つける脅威プログラム

 そもそもチートとは何なのか。日頃からオンラインゲームに親しんでいる方ならご存知だろうが、念のため説明をしておきたい。ネットワーク関連の用語に詳しいIT用語辞典を開くと、「いかさま、ごまかし、詐欺、不正行為などの意味を持つ英単語。ビデオゲームなどで非正規な手段を用いて進行に有利なよう状態を改変する行為などを俗にチートという」とある(※2)。

 『Apex Legends』や『VALORANT』など昨今盛り上がっているFPS作品を例に出すと、画面内の目標に対して自動的に照準をあわせる「オートエイム」、通常ならば視認できない壁越しの目標をライトアップする「ウォールハック」などがチートプログラムとして挙げられる。実際にFPS作品でチーターと遭遇した方なら分かるかもしれないが、遠距離から一発も外すこと無くマシンガンやアサルトライフルの銃弾を命中させるのは、超プロフェッショナルでもほぼ不可能に近い。チートはそうした難行をプログラムで無理やり可能にするが、公平性を著しく損なうのは言うまでもないだろう。

YouTubeで「Wallhack」を検索したページ。少し調べればチート蔓延の実態が浮かび上がってくる

 チートは真剣にゲームと向き合うユーザーを傷づけるだけでなく、オンラインゲームの存続そのものを脅かす危険な存在である。ゆえに使用は認められていないし、運営側もゲームサーバーの常時監視をはじめ、ユーザーから寄せられるゲーム内報告のチェック、PC常駐型アンチチートツールの導入……等々、日夜厳しい監視によってチーターを取り締まっているのだ。

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