東急が仕掛けるアート展示企画「Art Valley」が開催中 街から世界へアーティストを羽ばたかせるための新たな取り組み

 2023年1月23日より、東急株式会社のアートプラットフォーム事業「Art Valley」の一環として、東急線渋谷駅ヒカリエ改札口周辺吹き抜けガラス面にアート作品が期間限定で展示されている。

 本企画は「Art Valley」がアーティストの活動を応援、サポートするために始動。展示エリアにはECサイトへと繋がるQRコードが設置され、アート作品をフィジカル(実物)・デジタルの両方で購入することができる。アートを鑑賞するだけでなく購入する喜びも体験できる企画となっている。

 今回、東急線渋谷駅ヒカリエ改札口に登場したのは、原田郁が手がけるアートだ。原田はコンピュータ内に架空の世界を立ち上げ、仮想世界と現実世界を往来しながら、その世界を疑似体験した風景を絵画作品として描いている。今回掲出されているアート作品は、その仮想空間の一部。展示エリアにあるQRコードからECサイトに繋ぐと、この仮想現実内に設置できる看板や樹のNFTアートを購入できる。また、これらは原田にとって初めてのNFT作品となる。

現代美術家・原田郁(左)、「Art Valley」プロジェクトリーダー・高木寛子

 展示場所に足を運ぶと、見慣れた渋谷駅ヒカリエ改札前に原田のアートが大きく掲出されている。原田は今回の展示について「リアルとバーチャルを行き来して制作している作家としては今回、いいきっかけを頂いたなという気持ちです」と話しており、デジタル・フィジカルの両軸でアートを支える「Art Valley」との相性の良さを感じさせた。また自身の作品について「普段は仮想空間をもとに、その世界の一点を描いています。ですが、キャリアと共に仮想空間も相当な広がりを持ってきて、そのままの状態を見せることも増えてきました。今回は、PC画面をそのまま出力して、シートに貼り込んでもらったものになります」と説明。今回2箇所に分かれて展示されているうちの一方は、仮想空間にぐっと寄り、その部分を大きくクロースアップしたもの。地続きに広がる原田の仮想空間内をゆっくり堪能できる作品である。もう一方は仮想現実を広く切り取っているが、その中には、前述のクロースアップされた部分も含まれていることから、探してみるのも面白いかもしれない。

現代美術家・原田郁

 「Art Valley」の手がけるアートの展示は1月23日〜4月22日までの期間限定となり、約1ヶ月ごとにアーティストが入れ替わる。春に向けて毎月フレッシュな作品が改札前を彩ることで、電車利用客の気持ちを華やかにすることだろう。第1弾となる原田郁の作品は初日から2月22日まで、その後は2月23日〜3月22日までが田内万里夫、3月23日〜4月22日までは万美の作品が展示される。

 「Art Valley」事業でプロジェクトリーダーを務める高木はこれからの「Art Valley」について「最終的には世界から評価をうけ、街作りに寄与することで、地域プライドの醸成につなげていきたい」と話す。また、東急の資産を充分に活かし「アートエコサイクルの実現をし、将来的には海外のアート市場との接点となりアーティストと共に海外に広げていきたい」と語った。また、今回東急線渋谷駅ヒカリエ改札口に展示されるアーティストの選定について「田内万里夫さんについては、曼荼羅をモチーフに制作されていて、和的な要素がある。これからインバウンドのお客様が増えてきますので、アジア全体のイメージの表現ができる方だと思ってお願いしました。万美さんにおいても、3月4月の展示シーズンは海外のお客様が増えることもあり、和を表現するために選ばせていただきました」と語り、2月以降のアートがインバウンドをターゲットにした人選になっていることを明かす。

現代美術家・原田郁(左)、「Art Valley」プロジェクトリーダー・高木寛子

 これからも様々な施策を練っていくという「Art Valley」。今回のプロジェクトをきっかけに、さらに東京、世界へと羽ばたいていくことが期待される。

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