手書き文字をAIが代筆? 「こんなのは人間をダメにする!」と言われたサービスの開発秘話に迫る
「20年前の技術でも作ることができた」
――SNSでは手書きが機械に代替されることに困惑する声も寄せられました。手書きくんに関する周囲の反応についてどうお考えですか?
濱田:手書きくんのリリースに対して、「こんなのは人間をダメにする!」という声も寄せられています。私も拒否反応を示されると思っていたのですが、ネガティブな意見よりもポジティブな意見の割合が高くて驚きました。
――なぜ好意的に受け止められたのですか?
濱田:スマホの普及が大きいのではないでしょうか。正直、手書きくんは20年前の技術でも作ることができました。しかし、2000年は多くの人が携帯電話を持ち始めるようになったタイミングであり、まだITとの距離感は開いていました。いまの時代で受け入れられたのはITとの親和性が高まった、特にスマホが生活必需品になったことが影響していると思います。
「いま以上に“文章の上手さ”を突きつける予定はない」
――ここ最近、AIに描かせたイラストをSNSにアップする動きが盛んであり、そのクオリティの高さに驚かされることも珍しくありません。手書きくんもプロの書道家顔負けの文章を書くことはできるのでしょうか?
濱田:技術的には可能です。ただ、私としてはいま以上に“文章の上手さ”を突きつける予定はありません。やはり、手書き感のある文章のほうがもらったほうが嬉しいですよね。ですので、上手さではなく、いかに気持ちがこもった文章を書けるのかに注力したいです。
――手書きくんを始め、様々な営みがAIに代替されることに恐怖心を覚えている人もいます。AI時代の到来についてどのようにお考えですか?
濱田:「機械に仕事が奪われる」ということはこれまで散々議論されてきました。もちろん、無くなる仕事もありますが、それと同時にほかの仕事も生まれています。そもそも、機械は基本的に自分でやることが面倒なことを代わりにやってくれるため、怖がるのではなく、むしろ歓迎すべきだと感じますね。
――とは言え、AIを恐れている人は多いです。
濱田:私は将棋が好きなのですが、2~3年くらい前からプロ棋士がAIに負けるようになりました。ただ、AIに将棋界が乗っ取られたわけではありません。むしろ、AIの打ち筋をプロ棋士が参考にするようになり、一気に将棋のレベルが上がったように思います。AIを始め、ITを上手く活用することにより、いま以上に生活は豊かになるのではないでしょうか。