タイトー『MUSIC DIVER』とその背景 新しい演奏体験と確かな選曲眼が光る最新音楽ゲーム

 前述の演奏体験と並ぶ本作の特色は、独特の楽曲ラインナップである。5月のロケーションテスト時には20曲であった楽曲リストは、正式稼働時点で全50曲にまで大幅増加。ジャンルもEDM、アニメ・ポップス楽曲、ヴァーチャルシンガー系、東方アレンジ、オリジナルと幅広い。

 特筆すべきは、EDM系の選曲だ。音楽ゲームのEDMといえば、いわゆるJ-COREシーンと接近するハードコアテクノやアートコア系楽曲などが代表格として挙げられるが、本作の収録曲は少々毛色が異なる。

 EDMカテゴリでは、NCS(NoCopyrightSounds)最大級のヒット作であるラトビア出身コンポーザーTobuの「Hope」や、DJ/音楽プロデューサーとしてダンスミュージック~ヒップホップシーンでワールドワイドな躍進を続けるbanvoxが2015年にリリースしGoogleのCMにも採用された「Watch Me」、中田ヤスタカ率いるCAPSULEが2021年に進めた過去アルバムリマスター作品からのピックアップといった、独自の切り口を発揮。

 またkawaii future bassというジャンルそのものの開拓者であるSnail's House(Ujico*)を筆頭に、Yunomi、KOTONOHOUSE(ことのは)、HoneyComeBear、Mameyudoufu、Pure 100%ら、future bass~future core界隈に名だたる新鋭~中堅ミュージシャンらによる楽曲をもセレクトし収録。これらはゲーム内にEDMカテゴリと別立てで存在する、kawaii EDMなる独立カテゴリに収められている。このようなカテゴライズが成立し得る試み自体、発展と多様化の著しい音楽ゲームの世界でも極めて特異だ。

 またkz(livetune)がかつてGoogle ChromeのCMに書き下ろした「Tell Your World」はじめボカロ曲、Masayoshi Minoshima「Bad Apple!! feat. nomico」などの東方アレンジといった、かつて同社が『ミュージックガンガン!』で先陣を切り、今や現代音ゲーに欠かせない要素となった音楽分野も抜かりなく収録。さらに既存の音ゲー作品ファンに馴染み深いxi「FREEDOM DiVE↓」やnora2r「B.B.K.K.B.K.K.」といった定番曲も押さえる。

 コアな音ゲーマーへの求力を左右するオリジナル曲の品質にも、力が入っている。前出のKOTONOHOUSEに加えてヒゲドライバー、xiらによる新曲をラインナップ。ZUNTATAメンバーも書き下ろし曲を提供しており、ナビゲートキャラクターのレイラ(CV:加隈亜衣)をボーカルに迎えたMASAKIによるゲームテーマ「MUSIC DIVE!!」を筆頭に、土屋昇平や元ZUNTATAのCOSIOによる新曲も稼働開始時点から取り揃えている。これらオリジナル曲含め、全曲に楽曲ジャケットが用意されている点も特記に値するだろう。

 もちろん音楽好き・音楽ゲーム好きのみならず、ライトプレイヤーへの目配りも欠かさない。YOASOBIのメガヒット作品「夜に駆ける」をはじめ、「ONE PIECE FILM RED」主題歌のAdo「新時代」、TVアニメ「SPY×FAMILY」の第1クールOP主題歌であるOfficial髭男dism「ミックスナッツ」、音ゲーの高度プレイヤーとしても知られるmeiyoによるtiktok再生回数5億超の「なにやってもうまくいかない」といったヒット曲も収録する。

 こうした幅広い収録曲ラインナップは、独自の選曲眼を持つ複数のプランナーを置いての制作体制によって、楽曲ジャンルの多様性を確保した成果だという。音楽ファンや音楽ゲーム愛好家を惹きつけるコア方面に掘り下げられた目線と、ライトユーザーへの訴求力を有するバリエーションの両者を兼ね備えた確かなセレクションは、本作の立ち位置を宣言するユニークな一面だ。

MUSIC DIVERの今後の展開

 本作・MUSIC DIVERは2022年12月1日以降、ラウンドワン社の運営するアミューズメント施設約100店舗で稼働が開始される。

 また稼働に先立ち、前出「タイトー音ゲー部」の11月25日の配信で『MUSIC DIVER』の特集を実施。サウンドディレクターを務めるMASAKIとメインプランナーの窪田明朗を迎え、本作の自己解説や未発表楽曲の初お披露目などが行われる。

 物理デバイスによる演奏感を重視した、新しい音楽ゲーム体験。あらゆるユーザーを惹きつける、隙のない楽曲ラインナップ。本作『MUSIC DIVER』は、AC音楽ゲームのシーンに様々な革新を持ち込んできたタイトーらしさ溢れる新作音ゲーである。本作が示した様々な新コンセプトとユーザーの間で発生するであろう共鳴や、今後の新曲をはじめとするさらなる展開にも期待したい。

■『MUSIC DIVER』公式ウェブサイト
https://musicdiver.jp/

■タイトー音ゲー部#7
https://www.youtube.com/watch?v=_oi2hNd7Law

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