ヤングケアラー、受け子、ワープア……貧困に苦しむ高校生を大人はどう救う?社会派ドラマ『覆面D』から紐解く
学校の存在価値って、なんだろう。学歴が手に入ること? それとも、かけがえのない仲間に出会えることだろうか。筆者は、ABEMAオリジナルドラマ『覆面D』を通して、ひとつの答えにたどり着いた。学校は、生徒に“頼れる場所”を与えるためにあるのではないか、と。
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腐ったミカンが箱のなかにあると、すべてのミカンが腐ってしまう。だから、腐ったミカンは捨てなければならない。学園ドラマ『3年B組金八先生』(TBS系)で取り上げられた“腐ったミカンの方程式”。教育困難校が舞台となっている『覆面D』に登場する教師たちも、同じようなことを言っていた。
「雑草は、どんなに頑張っても花が咲かないだろ? そこを見極めて付き合ってやるのも、教育なんだよ」
果たして、本当にそうだろうか。問題を抱えた生徒は、もう二度と立ち直ることはないのだろうか。教師の立場からすると、ひとりの問題児よりも、多くの生徒を守らなければならないと思ってしまうのは、分かる。でも、どうにかしてあげたいという気持ちがあっても、見捨てなければならないのだろうか。
ヤングケアラー・ワーキングプア・10代での妊娠……主人公・大輔(関口メンディー)が赴任した高校には、さまざまな問題を抱え、本当は助けてほしいと思っている学生が、たくさんいる。生きていくのが、つらい。ひとりではどうすればいいのか分からない。でも、周りには頼れる大人がいない。だから諦めて、孤独と戦っている若者たちが。
大輔は、そんな彼らに“寄り添う”ことを始めた。寝たきりの祖父の介護をしながら、弟の面倒を見ている武藤啓(水沢林太郎)には、「巨漢レスラーを投げ飛ばしたら1000万円」の勝負に挑むところを見せて、諦めない心を教え込む。「努力じゃ変わらないものもあるんだって」と言っていた武藤が、絶対は絶対にないと気付いた瞬間。彼の心が、少しずつ前向きになっていくのが分かった。
そして、予期せぬ妊娠をした岡田カズ(秋田汐梨)に対しては、「おめでとう」と声をかける。これは、一か八かの選択だな……と思った。受け取る人によっては、「他人事だと思っているから言えるんだ」と感じてしまう可能性もある。しかし、岡田には大輔の想いが伝わったのだと思う。学校としては、問題を抱えている邪魔な生徒かもしれない。でも、自分は見捨てないという熱い想いが。もしも、大輔が突き放していたら、岡田はまた暗闇のなかにひとりで迷い込んでしまっていたはずだ。