メタバースにおけるクリエイティブはさらに深化する ツールの発展が制作にあたえる影響とは

 ここ数年で注目度が日に日に高まっている“メタバース”。ユーザーの参入障壁は、あらゆるサービスやデバイスの普及により、どんどん下がってきている。

 だが、ひとたびクリエイターの視点に立ってみるとどうだろうか。

 メタバース向けのクリエイティブは、なにも壮大なワールドを作るだけではない。たとえば、VRChatなどのメタバースで活動するアバターのデザインをしたり、アバターが着る衣服や使用するアイテムを制作・販売するなど、メタバースの人口が増えれば増えるほど、クリエイターがその手腕を発揮することが多くなってくるが、こうしたクリエイティブの世界は専門性が高いのが現状だ

 そういった時代の変化にあわせてか、クリエイター御用達の「Adobe」も、メタバース向けのサービスやアプリケーションを次々と実装している。

 わかりやすく例を挙げると、『Fortnite』、『Halo』、『ファイナルファンタジー』、『Flight Simulator』など、マルチプレイヤー型ゲームの開発においてその大半に「Adobe Substance 3D」が使用されている、といえばそのすごさが伝わるだろうか。

 これらのクリエイティブの制作には、あらゆるメタバース向けの制作ツールや機能の存在が欠かせない。

 たとえば、3D空間やアイテムを作るための共同制作ツールとして「Adobe Substance 3D」や「Adobe Aero」がある。「Adobe Aero」に関しては、ノーコードでの制作環境を用意することで、キャリアの浅いクリエイターでも簡単に参入が可能となった。

 また、コンテンツなどを管理できる「Adobe Experience Manager」により、多様なデバイスを持つユーザーに対して、3Dコンテンツを最適化して提供できる。

 最近では、「Adobe Substance 3D Capture」とフォトグラメトリ(写真測量)技術を使用して、実写の画像から直接3Dモデルを作成することがより容易になったし、Metaとのパートナーシップにより「Adobe Substance 3D Modeler」と近日提供予定の共同作業用レビューアプリがQuestプラットフォームに直接統合することも明かされた。つまり、Meta Questを使用しているユーザーは、そのデバイスを使って誰でも没入型3Dコンテンツを制作・共有し、体験することができることになったというわけだ。

 今回の『Adobe MAX 2022』においても、VRChat向けのアバターデザインやアバターファッションを手掛けているフリーランスCGデザイナーの鬼木拓実氏が、「Adobe Substance Painter」を使って短時間でメタバース向けのコンテンツを制作する方法について、丁寧にレクチャーをおこなっていた。

 今後実装される機能や技術を先行して知ることができる『Adobe MAX 2022』内の「Sneaks」では、著名なアーティストの筆遣いや色を模倣できる「Project Artistic Scenes」や、単一の画像から没入感のある3D VRエクスペリエンスをすぐに作成できる「Project Beyond the Seen」、2D画像やベクターを合成してたった1つのリファレンス画像から3Dスペースを作り上げ、現実の環境に近い形でデザインを可視化し、編集することが可能になる「Project Vector Edge」が発表されるなど、まだまだメタバース領域における創作の可能性は広がるばかりだ。

 あらゆる人がメタバース内で自由自在にクリエイティブを楽しめる未来は、そう遠くない。Adobeの進化が、人々のクリエイティブをまた、次のステージへと押し上げていることを実感した『Adobe MAX 2022』だった。

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