篠原ともえ、チームラボが語ったクリエイターとしての“源泉” 『Adobe MAX 2022』の特別セッションをレポート
続いて登壇したのは、デザイナー・アーティストとして活動する篠原ともえだ。1990年代に歌手としてデビュー、「シノラー」ファッションで一世を風靡した彼女は、2020年に夫である池澤樹とクリエイティブスタジオ、株式会社「STUDEO」を立ち上げるなど、デザイナーとしても活躍している。
はじめに篠原氏が見せてくれたのは、幼いころから描き溜めたという3万枚にも及ぶデザイン画の一部だ。学生時代にはプリントの裏や、宿題を終えたあとの裏紙にも描き続けたという彼女のデザイン画は、篠原の活動のルーツだという。
そんな彼女が語る、1つ目のクリエイティブの”源泉”は「感触を大切にすること」だ。幼少期から筆圧が高く、「ぐぐぐっと力を入れると、紙に文字が埋まるんです。なんだか、紙の中に自分が入っていってしまうような、そんな世界に没頭していました」と、創作にのめり込んだきっかけについて話してくれた。
「どんな髪型がしたいか、どんなお洋服を着たいか、想像を巡らせながら絵を描いていました。そうして中高生の時代を過ごし、歌手としてデビューしました。私が紙に描いた世界を表現するのが、メディアの世界だったんです」
続いて紹介されたのは、篠原が近年制作したイラストだ。「夕暮れの景色をモノクロで表現したらどうなるんだろう?」という疑問から着想を得たというイラストは、鉛筆と紙だけで夕暮れのグラデーションを表現しており、「自然の中にある風景からモチーフを得ること」が2つ目の源泉として語られた。
そうして描いたイラストのテーマを洋服のデザインに落とし込み、制作した衣装もあるという。篠原が「自分自身の絵からインスピレーションをもらうこともあるのです。」と語るように、「自身のルーツを振り返ること」もまた、彼女が大切にするクリエイティブの源泉なのだ。
ほかにも、イラストを洋服としてアウトプットするにあたって、「『絵を着られる』ような洋服が作りたかったんです」と、布の手ざわりを感じながら「どういったものができたらいいかな」と考えて試行錯誤を繰り返したエピソードも語った。
そんな篠原が近年挑戦し始めたのは、紙をニードルで削って作る「紙凹版」だ。紙の中にペン先が埋まる感触を大切にする、彼女にぴったりの手法だといえる。この日篠原がステージで着用していたシャツもまた、この「紙凹版」から着想を得て作られた「版画服」の一つだった。こうしたデザインの着想には、「街を歩いていて見かけた葉っぱ」や、「雨に濡れたアスファルトの輝き」といった「日常にある自然」からモチーフを得ているとして、インスピレーションの源についても共有してくれた。
「チームラボ」が「チームでものをつくること」「積み上げること」「場を維持しつづけること」とチームにおけるクリエイティブ制作の"源泉"について語り、篠原ともえが「感触を大事にすること」「自分の中のルーツを引き出すこと」「日常にある自然からモチーフを得ること」と、自身や素材との対話を"源泉"として紹介した本セッション。制作物の規模や種類は違う両名であったが、この”源泉”にはいずれも「対話」の側面があることに気づかされる。
第一線で活躍するクリエイターが、どのようにアイデアを得て、アウトプットしているのか。それぞれ異なる視点での「クリエイティブの源泉」について話を聞くことができた。本セッションは『Adobe MAX 2022』のWEBサイトからアーカイブ視聴が可能だ。気になる方はぜひ視聴して、自身の”源泉”についても考えてみてほしい。きっとあなたの創作活動の糧となるはずだ。
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