3Dクリエイティブの現在地と、その裾野を広げるAdobeの取り組み

 以前の記事で、筆者はメタバースにおけるクリエイティブの需要は高まるため、クリエイターは3Dでのものづくりに対応していくべきだと書いた。

 しかし、3Dでのクリエイティブは、なにもメタバース上のもののみにとどまらない。先日の『Adobe MAX』では、多様な事例とその可能性が提示された。

薄くなっていく3Dと2Dの壁 『Adobe MAX 2022』で感じた3Dクリエイティブの現在地

 写真やWEBサイトのような2Dコンテンツの歴史は長く、制作におけるテクニックやソフトの活用などについてもさまざまな参考文献や制作事例が存在している。効率的なワークフローやクオリティアップのテクニックも数多く共有されており、コンテンツ制作における”成熟期”を迎えているように個人的には思う。作ったものをアウトプットする方法ーーつまり写真を印刷するのか、WEBサイトに掲示するのか、布に印刷するのか、といった出力先の選択とそれに最適化された制作フローについてーーも、ここまで蓄積されたテクニックやワークフローが盤石なのは間違いない。

 それに対して3Dコンテンツの制作においては技術革新が目覚ましい。ハード・ソフトの性能や価格を加味すると、一般用途のコンピュータで3DCGを手軽に扱えるようになったのはだいたい2010年代後半ごろだろうか。そこから社会は急速に発展し、個人が3Dアバターを制作したり、VRゴーグルでコンテンツを楽しむことも珍しくなくなってきた。

 ハード・ソフトの両面において革新は現在も続いており、さらに、3Dコンテンツの制作においては、「画面の中で見られるもの」「VRゴーグルを着けて見られるもの」「3Dプリンタで出力されるもの」と、制作物が最終的にどこで見られるのか、によって作り方が大きく異なる。この2点から導かれるのは、「制作のワークフローやテクニックが全く成熟しておらず、革新的な制作フローがまだまだ提案される可能性がある」「既存の業界においても3Dを活用することで、全く新しいワークフローを構築できる可能性がある」ということだ。

 たとえば、基調講演でも語られていた事例だが、「Adobe Substance 3D」などの3D制作ソフトで製品サンプルを作って3Dプリンタで形にすることにより、商品開発における製造コストは企業のみならず、個人単位でも大幅に下がる。そのうえ、サンプル量が減ることはCO2の削減にもつながるなど、SDGs的なメリットまで存在するという、メーカーにとっては一石二鳥どころではない利点がある。

 ほかにも、アパレルや家具などでARを使った試着やバーチャルレイアウトなどが普及しているように、3Dでプロダクトデザインを制作し、それをユーザーが見れるようにすることは、ECにおいてコンバージョンを高める要素のひとつにもなるなど、ビジネスとしてのメリットもあるようだ。

 また、これから3Dクリエイティブを学ぼうというクリエイターにとってみれば、この状況はある種のチャンス、ともいえるだろう。

 「Substance 3D Modeler」では、Meta QuestなどのHMDを使って直感的なデザインを行えるうえ、「Adobe Substance 3D Collection」を「Adobe Creative Cloud」に追加していれば、「Adobe Substance 3D Assets」を介して1,000種類以上の「Adobe Substanceマテリアル」と3Dモデルにアクセスできるなど、素材にも困らないため、プロのクリエイターではなくとも手軽に創作を始めることができる。

 まだまだ未成熟の市場であるため、勉強しながら創作活動を行うだけでも、先行者利益を享受できる可能性は大いにあるだろう。

 これから3Dでの制作は、2Dでの制作と同じくらい当たり前になっていくと断言できる。その大海原に出るのは、まさにいま、この瞬間なのかもしれない。

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