「サイレントヒル」4つの新作が意味するものとは 名作シリーズの“挑戦”について考える

 2022年10月20日、YouTube上に設けられた「サイレントヒル」公式チャンネルで、同シリーズの最新情報を取り扱う番組“SILENT HILL Transmission”が配信された。

SILENT HILL Transmission (JP) | KONAMI サイレントヒル

 映像は約50分で、国内外のスタッフがかわるがわるに登場しつつ、過去作のリメイクやシリーズ最新作、さらに映画版の制作を発表。海外の人々は今回の配信にとくに注目していたようで、番組が終わって10時間ほどしか経っていないにも関わらず、本配信の英語版の再生回数は43万回以上だった。

 「サイレントヒル」は、コナミを代表するゲームシリーズ。1999年にプレイステーションで第1作が発売されて以来、複数の続編が作られてきた。霧が立ち込める町“サイレントヒル”がシリーズ共通の舞台になっており、そのサイレントヒルも、濃霧で先が見えない状態の“表世界”と、血や錆、暗闇が強調された“裏世界”というふたつの側面を持つ。プレイヤーはこの2種類の世界を行き来しながら、サイレントヒルを脱出するのがおもな目的になっている。

 リメイクやリマスターを除くと、2013年にPlayStation Vita向けに発売された『サイレントヒル ブック オブ メモリーズ』がシリーズ最後の作品だ。

 2014年には、当時開発予定だった『Silent Hills』の世界を体験できる作品として、小島秀夫氏が開発した『P.T.』が配信されるも、諸般の事情によって本編の制作が中止。『P.T.』の配信も止まってしまった。9年以上新作が出ていなかったために、「サイレントヒル」に関する今回の配信は、告知された段階で大きな注目を集めていた。

 本稿では、情報番組のSILENT HILL Transmissionで明かされた情報をおさらいしつつ、筆者がとくに注目したいポイントをいくつかピックアップ。その詳細などをお届けしよう。なお、本記事で使用している画像はすべて番組から抜粋している。

『サイレントヒル2』のリメイクや、日本を舞台にした『サイレントヒルf』が判明

 番組冒頭では、まずリメイク版『サイレントヒル2』のトレイラーが登場。主人公であるジェイムス・サンダーランドらしき人物が現れ、舞台となる街を探索するシーンや、敵と戦うシーンなどを垣間見ることができた。本作はPS5向けではあるが、発売から1年後以降はPC版のリリースも予定しているようだ。

 トレイラーが終わると、シリーズのプロデューサーである岡本 基氏と、プロホラーゲーマーでありMCの分野でも活躍しているセリーナ氏が登場。両名が進行役を務めた。

岡本 基氏(左)とセリーナ氏(右)

 最初の情報は『サイレントヒル2』のリメイクについて。1作から3作でアートディレクションなどを務めた伊藤暢達氏が登場したほか、同シリーズで音楽を手がけた山岡 晃氏がビデオメッセージを寄せた。

 2001年に発売された『サイレントヒル2』が21年の時を経て復活することには、ふたりとも深く感銘を受けているようで、さらに両氏は今回の開発にも参加しているようだ。そのほか、リメイク版『サイレントヒル2』はポーランドに拠点を置くゲーム開発会社、Bloober Teamが担当していることも明かされた。

 続いて新たなトレイラーが流れるとともに、シリーズ新作の『サイレントヒル Townfall』が発表された。こちらはアメリカのAnnapurna InteractiveとスコットランドのNo Codeというふたつのゲームメーカーがコナミと提携して開発を進めている。

 番組ではNo Codeのクリエイティブディレクター、Jon Mckellan氏がビデオメッセージを寄せ、『サイレントヒル』は第1作を遊んで以来のファンであること、No Codeにとって本シリーズはインスピレーション以上の存在であることなど、熱い思いを語っていた。さらに、今回は「ちょっとしたトレイラーしか公開できなかったが、新年には新しい映像を紹介できる」とのことなので、2023年初頭には新しい動きがありそうだ。

 ここでアシスタントプロデューサーの内藤 塁氏を迎えて、新たな「サイレントヒル」の情報へ。内藤氏はシリーズのIP展開・クロスメディア展開を担当しており、彼からは映画版の新作が進行していることが明かされた。

 『サイレントヒル』は過去に2度映画化されている。その両作を担当したVictor Hadida氏から次の映画を作りたいという提案があったのがきっかけのようだ。なお、映画版の第1作で監督を務めたChristophe Gans氏が今作でも続投する。

 両氏はビデオメッセージも寄せている。映像では、今作は若い男性が深い愛を知った場所であるサイレントヒルに戻ってくるという話になる点や、映画化にあたって現代的にはするが、ゲームの世界観を決して壊さないという点などが語られていた。

Christophe Gans氏
Victor Hadida氏

 シリーズのグッズ紹介を挟んだ後は、アメリカのゲームメーカー・GenvidのCEOであるJacob Navok氏を招いて新しい話題へ。トレイラーが流れ、新作である『サイレントヒル Ascension』が発表された。

 Navok氏曰く、同作は多数の人と体験を共有できる作品になっているらしい。何百万人もの人々がともに見守る、リアルタイムのライブ・インタラクティブ・シリーズであり、参加者は物語の結末を変えたり、シーンに登場したりすることができる。本作は2023年に配信予定だ。

Jacob Navok氏

 番組の最後には、新しい「サイレントヒル」である『サイレントヒルf』のトレイラーを公開。シリーズ初の和風で、1960年代の日本が舞台になるらしい。映像では、セーラー服の少女がなにかから逃げるシーンなどが確認できた。また、『ひぐらしのなく頃に』や『うみねこのなく頃に』を手がけた竜騎士07氏がシナリオを担当することも判明した。

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