3年で撤退のGoogle『Stadia』 クラウドゲーミングは“砂上の楼閣”だったのか
最近ならば、暗号通貨とNFTの例もわかりやすいかもしれない。ここ1年ほどでよく耳にするようになったNFTという言葉だが、暗号通貨の分野には5年ほど前から似た動きがあった。特定の通貨のブロックチェーンをゲームに活用し、各タイトル内で扱われているアイテムを暗号通貨で取引しようというものだ。当時は“新たな文化の到来”として界隈で注目を集めていたこの動きだが、結局(現時点では)思うように浸透せず、低迷を続けている実態がある。しかし、こうした胎動があったからこそ、NFTがいま盛り上がりつつあるのは間違いない。Google『Stadia』を同様の存在と考えられはしないだろうか。
直近では、動画コンテンツのストリーミングサービスを展開するAmazonやNetflixなどもゲーム事業に注力している。本来のゲームとは別の市場から参入してきた両社は現在のところ、モバイル端末向けにコンテンツを提供しているが、長期的にはスマートフォンや低スペックのPCなどに向けたクラウドゲーミングでのサービス展開も視野に入れているのかもしれない。Amazonは2022年3月、アメリカ国内で自社のクラウドゲーミングサービス『Luna』の提供もスタートさせている。以上を踏まえると、Google『Stadia』の撤退はむしろ、クラウドゲーミング定着に向けてのひとつの段階とも考えられるはずだ。
市場の動向によっては今後、Googleが再参入する可能性もあるだろう。キーパーソンの撤退は、一概にクラウドゲーミング文化の行き詰まりを示すものではない。登場が早すぎたサービスの失敗が糧となり、今後にわかに勢いを増していく。私はそのような道筋を辿るような気がしてならないのだ。