小惑星探査機にも使われた「イオンエンジン」を海外YouTuberが製作 小型ながらも技術力の詰まった完成度に驚愕

 アメリカの科学系チャンネル「Plasma Channel」(チャンネル登録者数36万人)が、イオンスラスタ(イオンエンジン)と呼ばれる、電気推進のロケットエンジンの一種を自作する動画を投稿した。該当の動画は、2022年9月17日公開の「Designing A Next-Gen Ionic Thruster! (For Flight)」だ。

Designing A Next-Gen Ionic Thruster! (For Flight)

 イオンスラスタは別名「イオンエンジン」で、マイクロ波を使ってプラズマを作り、強力な電場で加速して高速で噴射させることで推進力を得る、電気推進エンジンのこと。科学推進のエンジンと比べると推進力は小さいものの、非常に燃費がよく、長時間加速し続けられるのがイオンエンジンの大きなメリットとなっている。そのメリットを活かし、打ち上げられたあとの宇宙探査機や人工衛星の軌道制御に用いられることが多い。なお、世界で初めてイオンエンジンの実用化に成功したのは、日本の小惑星探査機「はやぶさ」である。そのイオンスラスタを、小型ではあるが自作してしまったのが、男性が運営するアメリカの科学系チャンネル「Plasma Channel」である。

 彼が今回製作するイオンエンジンは、プラスチックやワイヤーなど市販で手に入る材料を使い、また軽量なのが特徴。通常のイオンエンジンとは異なり、特殊な電極で動かしており、十分に高い電圧を与えることで、イオン風を生み出す仕組みとなっている。

 彼が小型のイオンエンジンを完成させたあと、ろうそく3本に火をつけて吹き飛ばすことで、推進力のテストを行った。最初はうまくいかなかったが、その後電圧などに改良を加えたことで、見事3本のろうそくの火を消すことに成功している。

 さらに、45kV(キロボルト)以上の電力を与えたところで、風速2.3メートルまで計測した。風速2メートルといえば、人が風を感じられる程度の強さであるが、彼の自作のイオンエンジンでこれを成し遂げたのは素晴らしいといえる。また副次的な結果ではあるが、暗闇の中でこの小型イオンエンジンを起動させると、紫色や青色などが輝き、非常に綺麗な様子を見せてくれた。彼は動画内で、今後もイオンエンジンの改良を加えていくと伝えており、また将来的にはイオンエンジンをベースとした飛行機を製作したいという野望も語った。イオンエンジンのDIY過程や試行錯誤の様子は、視聴者として見ていて非常におもしろい。科学が好きな方はこの機会にぜひ視聴してほしい。

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