25周年を迎えた名作FPS『ゴールデンアイ 007』の“映画原作ゲーム”としての魅力。実は関心を誘う要素の宝庫?

『ゴールデンアイ 007』25周年を機に振り返る

 『ゴールデンアイ 007』。1995年上映の映画『007 ゴールデンアイ』を原作とする3Dガンアクションゲーム、現代で言うファースト・パーソン・シューティング(FPS)ゲームが、1997年8月23日にNINTENDO64向けタイトルとして発売された。

 そんな同作はちょうど本日で発売から25年を迎える。この作品がFPSというジャンルにどれほど大きな功績を残したのか。それは約800万本以上を売り上げた海外の記録が物語る通りである。

 日本国内も海外ほどの大ヒットにこそならなかったが、白熱・爆笑必至の対戦モードが当時のゲーム雑誌で特集されるなどして注目を集めた。体験したプレイヤーからの評価も高く、NINTENDO64の名作のひとつとして挙げられる例も少なくない。この『ゴールデンアイ 007』が初めてのFPSだった、3D酔い初体験だった、という人も少なくないだろう。

 同時にこのような例も少なくないと思われる。『ゴールデンアイ 007』を機に原作の『007』(ダブルオーセブン)を知った、というものである。

 実のところ、筆者はそのひとりである。この『ゴールデンアイ 007』を皮切りに、映画シリーズ中心に『007』を追いかける人間になった。それなのになぜ、『ゴールデンアイ 007』を買うに至ったのかと言われれば、前述のゲーム雑誌の特集などに影響されてという話になるのだが、それは割愛する。

 しかし、『ゴールデンアイ 007』はそんなにも原作への興味を誘う作品だったのか?

 発売25年を機に改めてその視点から、本作を振り返ってみたのだが、思いのほか本作には原作への興味を誘う要素が盛り沢山だったことに気づかされた。それも対戦モード、説明書、果ては任天堂公式の攻略本まで、様々なところに揃っていたのである。

オリジナル要素多めながら、できる限りの再現を目指した1人用の本編

 『ゴールデンアイ 007』は映画『007 ゴールデンアイ』を忠実に再現したゲームだったのか? 正直に言うと、それはかなり際どい。特に1人用の本編は、ストーリーの大筋こそ原作の映画版と同じだが、大部分はゲームオリジナルとなっている。

 たとえば最初のステージである「ダム」。映画版でも最初のオープニングに登場するが、映し出されるのはわずか数分。主人公の007ことジェームズ・ボンドがダム最上部からバンジージャンプを決め、最下部の化学工場へと潜入するぐらいしか描かれていない。

 それがゲームだとどうなっているのか? 警報装置の破壊、サーバーコンピュータからの運営データの奪取といった任務もこなすに留まらず、ダム近くの監視塔、ゲートやトンネルといった地形が登場し、大幅に規模が大きくなっている。当然ながら攻略に要する時間も長い。それもあってか、映画版以上に強く印象に残りやすくなっている。

 その後に登場する「雪原」「地下基地」のステージ2つも際立った違いのひとつ。そもそも映画版では007自身、この地には訪れない。そのような場所を探索したり、任務を遂行する点で異色の展開なのは言うまでもない。

 これに限らず、「化学工場」では006ことアレック・トレヴェルヤン以外にドーク博士なる仲間が登場したり、「サイロ」に「駅」といった、そもそも映画版に登場すらしない(あるいは、一瞬描かれた程度の)ステージが出てくるといったものがある。細かい所でも登場する銃火器、秘密兵器などにも映画版にはないものがある。

 あくまでも全体の一部だが、これだけでも映画版を忠実に再現したゲームだったかと言えば、際どいと言わざるを得ないだろう。

 ただ、技術的に発展途上でその制約も多く、現代のFPSのような映画的演出も難しかった時代。さらに映画版をそのまま再現するだけでは、ゲームとして成立するかも怪しい一面もある。それを思えば、オリジナル要素が強めなのは、悪いこととは言いがたい。むしろゲームなりの表現や面白さに振り切ったのは、方向性としては正しかったといえるだろう。

 実際、様々な任務を遂行しながら攻略していく構成は、単にゴールを目指すだけでは終わらない入り組んだ展開を実現し、ゲームとしての面白さ、007のスパイという設定を両立したものに完成されている。基本、静かな行動推奨で、銃撃戦は余程の時を除いて控えることが求められるゲームバランスもまた然り。

 また、映画版の象徴的な要素、場面は軒並み押さえられている。特に背景、地形の再現度は高い。「化学工場」のトイレ、そこから出た先にある階段と下の階層の部屋の配置に関しては映画版を忠実に再現していて、思わず唸るほどである。

 本編中盤の「軍用書庫」も課せられる任務こそ別物ながら、構造は映画版を踏襲している。逆に化学工場からの脱出、市街地を戦車で爆走するといった再現しきれていない場面も相応ではある。

 だが、それもゲーム側のアレンジを施し、独自の展開とスリルを描いている。そして、そのようにしているからこそ、「映画版はどうなっているのだろう?」と、興味を抱かせる引き金にもなる。オリジナル要素豊富であっても、大筋のストーリーは映画版を踏襲しているがゆえの効果ともいえるだろう。

 たしかに映画版の忠実な再現としてみると厳しい。だが、そこを補うアレンジが効いているのに加え、「スパイが主人公のFPS」として独特の面白さを持つものに仕上がっている。こうした単体のゲームとしての面白さ、制約の中で忠実に原作を再現するこだわりが発揮されていたことが、結果的には映画版への興味を誘う効果を及ぼしていたのかもしれない。

 実際、ゲームから映画版へと足を踏み入れた人間から見ても、「これが映画ではどうなっているのだろう?」という気持ちにさせる部分は多かった。同時にそうした関心をより後押しする”フック”も多数存在していた。

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