意外とわかっていないテクノロジー用語解説

最近よく聞く「VTuber」ってなに? バーチャルタレントの歴史を振り返る

 バーチャル世界で活躍するタレント、あるいは人がデザインしたタレントというアイデア自体は、アニメや小説、ゲームの世界ではさほど目新しいものではない。古くはアニメ「メガゾーン23」(1985年)の「時祭イブ」、小説ならば東野司「ミルキーピア物語」(1987年)のアイドルソフト、「京美」や「聖哉」といった例がある。また、架空のキャラクターが現実でもアイドル的に受け入れられた例としては、キャラクター名義のCDが発売されるなどした「超時空要塞マクロス」(1982年)の「リン・ミンメイ」、ゲーム「ツインビー」シリーズの2P側パイロット「パステル」の「国民的アイドル化計画」や「ときめきメモリアル」(1994年)の「藤崎詩織」などが挙げられる。さらには伊集院光のオールナイトニッポンの企画(1989年)から架空のアイドル「芳賀ゆい」が誕生して写真集やCDを発売し、話題になったこともあった。

 こうした背景を元に、大手芸能プロダクションのホリプロは1996年には「バーチャルアイドル」という触れ込みで「伊達杏子」をデビューさせた。リアルなフルCGの伊達杏子は、商業的にはさほど大きく成功したとは言えないかもしれないが、バーチャルアイドルという存在を広く知らしめたひとつのエポックメイキングな出来事であった。

 その後も、1998年の3D CGアイドル「テライユキ」、2005年のゲーム「アイドルマスター」や、2007年のボーカロイド「初音ミク」といった存在が、現実と仮想空間の垣根を下げていった。どちらのコンテンツも、ユーザーの間で二次創作という形でコンテンツが拡大し、それを公式が取り入れることによって拡大していく、ファン参加型のコンテンツとして成立した。アニメやゲームに端を発するキャラクターを現実のものとして受け入れる「ごっこ遊び」の要素と、ユーザー参加型コンテンツの二次創作的な盛り上がりこそが、バーチャルなアイドルが成立する素地として重要な役割を持ったと指摘できる。この点にはVTuberが受け入れられたことの前提として、決して無視できない相関性があるだろう。

HatsuneMiku「【TOKYO】初音ミク「マジカルミライ 2020」ライブ映像 / Hatsune Miku"Magical Mirai 2020" Concert Report」

関連記事