『本屋大賞』受賞作装丁、アパレルブランドのディレクター……雪下まゆが語る、肩書きに囚われない自己表現

雪下まゆが語る、肩書きに囚われない自己表現

「インスタは自分の名刺のようなもの」デジタルネイティブだからこその使い方

ーー雪下さんは現在ご自身の作品をデジタルで描かれていますが、いつごろから切り替えたのでしょうか?

雪下:高校生くらいから、PixivやTwitterに自分の絵を上げることはある種当たり前になっていて、その流れで自分もペンタブを使って、デジタルで描いて投稿していました。

ーー環境をデジタルに変えてみてどうでしたか?

雪下:デジタルで描くようにはなりましたけど、実際にキャンバスに描くこととあまり方法は変わっていなくて。私は厚塗りが好きなので、デジタルでもレイヤーを重ねて描く、というよりかは自分の筆で重ねて描いていくスタイルなんです。でも、デジタルの良さも活かしたいなとは思っているので、ツールや機能は使いつつ、自分の作品に反映しています。

ーーデジタルツールの良さはどんなところにあると思いますか?

雪下:絵を動かせるということはアナログでは無理なので、やってみて面白かったですね。大学生のときにTwitterを見ていて、静止画が動き出したら目について面白いんじゃないかと思ってGIFの作品を作ったことがあるんです。それがきっかけでモード学園さんから広告の案件をいただいたことがあって。そういう動く表現ができるのはデジタルで描くことならではですよね。

ーーそのようにTwitterからお仕事がくるようなことが多いと思うのですが、活用方法などは考えているのでしょうか?

雪下:8年くらい前からTwitterで絵を投稿していて、最初のうちは仕事にも繋がればいいなと思っていたので、どういうツイートにいいねがついたり、拡散されたりするんだろうとか、フォロワーがどうやったら増えるかなどを考えながら運営していました。いまは、仕事をいただけるようになったこともあると思いますが、あまり気にせず投稿するようになりましたね。自分の好きなものをそのまま投稿して、それを見てくださった方からの反応が大事なのかなと思っているので。

ーーあまり戦略的に投稿しすぎても、本来の作品の良さを見失ってしまうかもしれないですよね。

雪下:私の場合は拡散やいいねの数を気にしたり、毎日投稿するという目標を立てていたりすると気にしすぎて絵が描けなくなってしまうので、自由に運営したほうが続くのかなとは思います。無理はよくないですね。

 ただ、フォロワーの方から応援のメッセージが来たり、褒めてもらえていたりするのは嬉しいし元気がでるのでSNSをやること自体は良いこともありますね。

ーーちなみに、Instagramはどのように使っていますか?

雪下:インスタは自分の名刺みたいなものだと思っているので、最近は自分の作品の色が出るように投稿しています。いまって友達同士でお互いを知るために交換するのもインスタだし、何かを紹介することもインスタを引用することが多いですよね。自分の公式サイトよりもインスタの方が人の目にとまる機会が増えてるんじゃないかなと思うんです。だからインスタも1つの作品だと思って意識してますね。いまはTwitterよりインスタをメインにつかってます。

ーーやっぱり絵がパッとみてわかるインスタの方が使いやすいんでしょうか。

雪下:私は告知の文章を考えるのが苦手で……(笑)。インスタの、たとえばストーリーズだったら、絵とか展示の様子を写真で撮って載せて「やってるよ」とだけテキストを添えておけば告知になりますし、残らないですし、直感的に投稿できるので使いやすいです。

マルチな活動は全て自己表現。様々な肩書きを持つクリエイターは互いに助け合っていく

ーー雪下さんはイラストレーターだけでなく、アパレルブランドのディレクターやDJ、ラジオ好きとしてのメディアへの出演など活躍の場を広げていますが、こういったマルチな活動は昔からずっと続けているんですか?

雪下:いえ、最初は絵だけで活動していこうと思っていました。ただ2年くらい経ってそれが苦しくなってしまった時期がきて。1つのことに縛りつけることで、自分の首を締めてしまっていたんです。それがきっかけで、あまり絵だけと決めつけすぎずにいろんなことをやる方が精神的にもいいのかなと思って、いまに至ります。

ーーそれが功を奏して、ご自身のアパレルブランドでは雪下さんにしかできない表現が生まれていますよね。

雪下:いろんな活動していますが、全て自己表現のうちにあって、繋がっていると思っています。おっしゃっていたように絵に自分のブランドの洋服を登場させることもできるし、反対に絵をアパレルに反映することもできる。音楽を作れるようになったら自分のブランドのムービーに使いたいなとも思っていますし、それぞれ違う活動のようで、離れているものはないというか。どれにも偏りたくないですし、自分がハマれるものだったらやっていきたいと思っています。

ーーちなみに、デジタルアートの業界でいうと、ここ1年くらいでNFTに参入する人が増えていますが、雪下さんはNFTについてどのように捉えていますか。

雪下:私は「全然あり」だと思いますね。一緒に活動しているアーティストのCOIN PARKING DELIVERYともやってみたいよねと話していたりして。たとえば私の動く絵の作品と相性が良いと思います。ただ、一緒にやる人は見極めないとなと思っているので、そこがなかなか見つからずまだ始められていないんですが、アーティストの作品に価値がつくという意味では良いものだと思っています。

ーー昨今マルチで活躍するアーティストの方は増えていると思いますが、様々なジャンルの活動に挑戦していくなかで、壁を感じた場合はどうすればいいと思いますか?

雪下:私は絵に関しての活動は長い一方で、DJに関しては最近始めたばかりで新しいことを覚えるのに必死なんですが(笑)、周りに教えてくれる人たちがたくさんいたので抵抗なく挑戦できたと思っています。みんな音楽だけじゃなくてデザイナーだったり、自分のブランドを持っていたりと、私と同じようにいろんなことに挑戦している人が多いので、互いに寛容なんだと思います。

ーーいろんな肩書きを持って活動している方が増えているからこそ、互いに教えあって助け合う文化が生まれているんですね。

雪下:そうですね。なにか創作をしている人は違うジャンルでも作ってみたいと思うのかもしれないですし、ほかのジャンルの活動でインプットしたことが別の活動で役に立ったりもするので、なにを学んでも無駄にはならないと思っています。

■雪下まゆ個展「I wanna talk about my mind./」
展示名:I wanna talk about my mind./
開催期間:2022年8月19日(金)〜8月24日(水)
開催時間:13:00〜20:00 (最終日のみ18:00close)
開催場所:SO1(エスオーワン)
住所:東京都渋谷区神宮前6丁目14−15

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