読書感想文に苦しむ子どもたちに薦めたい ピース・又吉のYouTubeが伝える“読書の自由さ”
夏が来るたびに読書感想文にてこずった記憶が蘇る。
ライターやレビュアーといった仕事をしているから、学生時代は読書感想文が得意だっただろうと言われるが、そんなことはない。
苦手だった理由は、教師が納得したり喜んだりする感想を書きたくなかったからだ。国語の授業の「作者の気持ちを考えてみましょう」といった質問は、「それっぽい」答えを言わなければ否定された。クラスメイトから失笑されたり冷ややかな言葉を浴びせられたりもした。そういった経験の積み重ねが、私の中で徐々に「文章を読むこと」=「みんなが納得する答えを探す」ことになっていった。
だから、その発表の場である夏休みの読書感想文が苦手だった。そもそも大人が選んだ課題図書の中から選ぶのもどうかと思う。子どもと大人のセンスや受け取り方は時代の流れとともに変化するからだ。
とまぁ、いきなり不満たらたらの書き出しになってしまったが、読書感想文から解放されて30年近くが経過しようとしている今、素晴らしいYouTube動画を見つけた。
それが、ピース又吉直樹【渦】公式チャンネルの「インスタントフィクション」というシリーズだ。
解釈はひとそれぞれ
「インスタントフィクション」とは、200〜300文字程度で書かれた自由な文章を、読書家として有名で自身も小説家であるピース又吉扮する髑髏万博(しゃれこうべばんぱく)先生が自由に解釈して解説するシリーズだ。
彼の解釈方法はユニークでルールにとらわれず、作者に対して忖度しない。遠慮もなければ、全く別の内容になっていることもある。その内容をサルゴリラの児玉智洋が聞いてツッコミを入れたり感嘆したりといった流れになっている。
解釈の方法は多岐に渡り、単語や名称から深読みする場合もあれば、#5の
「ダイエットは明日から…結婚しないけど別れたくない…【#5 インスタントフィクション】」のように、句読点で文章を図式化して解釈する方法まで展開する。
国語で習った句読点ルールをあえて破ることで、作者が意図した形で情景を描かせる方法がある、というのは相当な読書家でなければ気付けないことだろう。
この動画の中で、万博先生は、文章を電車の車両にたとえるという、にわかに信じられない解釈をする。さすがにそれはないだろうとツッコミを入れたくなるが、最終的には電車にしか見えてこなくなるから不思議だ。
リアクション動画も
万博先生の動画は、「講師陣に解釈動画を見せてみる」というリアクション動画シリーズも作っている。
一流塾講師や東京大学の大学生などが、万博先生の自由で楽しい解釈を見て頭を抱えたり、驚いたり、受け入れたり、自分の解釈とは違うとコメントしたりする様子を見るのは楽しい。
また、そういったリアクションを通して、文章の解釈が人によって異なることや、文章への個人の向き合い方も感じられる。つまり、二重になって「自由に読んで感じるべし」とメッセージされていると言える。
ときには、「こういった解釈をしてしまっては作者に失礼なのでは」といった意見も出てくるが、それだって作者へのリスペクトという大事な感情だし、もしその回を作者が見ているとしたら(高確率で見ているだろう)、自分すら気づかなかった言葉選びの先に広がる世界に、新たな可能性やアイディアを見出すのではないだろうか。