ゲームのダウンロード購入経験者は4人に1人。利用実態から見えてきた“業界の思惑”とは

ゲームの利用実態から見えてきた“業界の思惑”

「デジタルサービスを顧客・コンテンツ流出阻止の一手に」

 先の調査では、デジタルサービスを利用しない理由に「中古として売却できない」という意見があった。残りの約75%のうちのいくらかのユーザーにとっては、中古市場への売却が遊び終えたあとの重要な選択肢であるというわけだ。しかし、プラットフォーマー、メーカーの立場からすると、この動きは別のマーケットへの資産の流出となっている側面がある。本来であれば、「1本」として販売本数に計上され、メーカー希望小売価格(もしくは、それに近い値段)でユーザーに届けられていたソフトが、自身のマーケットとは違うところでディスカウント販売されているのだから、指をくわえて見ているわけにはいかないだろう。過去には、プラットフォーマー・メーカーと中古販売を担う企業との間で裁判となったケースも存在する。

 一連のデジタルサービスは彼らにとって、こうした流出を阻止する手段だ。利便性と引き換えに再利用できない商品を提供することで、業界は顧客・コンテンツといった資産の流出を抑えられる。それによって売上・利益が増加すれば、業界で働く人間を守ることにもつながるだろう。最近は、発売元によってダウンロードソフトがセール価格で販売される機会も増えている。この取り組みもまた、デジタルサービスへの注力とおなじ方向性だろう。一部には、「一度販売した商品を再利用するのは購入者の権利である」「中古市場が盛り上がることでゲーム業界全体も潤う」といった意見もあるが、共存している現状が転売の温床となっている実態にも目を向けておきたい。「経年劣化のないコンテンツを第三者が再販できる」という業界を取り巻く特異な体質が、デジタルサービスをめぐるユーザーの利用状況と市場動向を乖離させているのではないだろうか。

 今後、ダウンロード購入やサブスクリプション・クラウドゲーミングは、おそらくユーザーとプラットフォーマー・メーカーをつなぐ主な接点となっていくだろう。音楽ストリーミング・ビデオオンデマンドサービスの台頭によって、レンタルショップ・テレビメディアが衰退傾向にあるのと同様に、ゲーム業界も再編されていくのかもしれない。

 そうしたカルチャーに遠いながら関わる人間として望むのは、商品・サービスに支払われた対価が正しく作り手に落ちる業界構造だ。株式会社ゲームエイジ総研が発表した今回の調査結果は、同社の主事業に記載されている言葉どおり、本当の意味でのゲームビジネス全体と地続きであるような気がしてならない。

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