特集:テックとアイドルのシナジー(Vol.2)
BTSをキャラクター、ウェブトゥーン、NFTで次々IP展開 韓国HYBEに聞く「ファン体験の拡張」とは
BTSがウェブトゥーン・小説、NFTにも! 広がるアーティストIPの可能性
さらにHYBE担当者は、技術の進歩の中で、事業の中心となるのはオリジナルストーリー(OSB)、ゲーム、NFT事業だと説明する。
今年登場したのが、HYBEが直接企画、開発したオリジナルストーリーのウェブトゥーン(Webtoon、ウェブ漫画)及びウェブ小説、「7FATES: CHAKHO」「黒の月: 月の祭壇」「星を追う少年たち」だ。これら3作品はストーリーとアーティスト間の繋がりを作る“アーティストコラボレーション方式”となっている。
「これはストーリーにアーティストがキャスティングされた形式です。アーティストから着想してストーリーなどを作るのではなく、先にオリジナルストーリーを開発し、そのキャラクターをアーティストが表現することで、ファンの没入度を高めつつ、新しいアーティストの魅力を発見できます」(HYBE担当者)。今後はウェブトゥーンやウェブ小説にとどまらず、ほかのジャンルやフォーマットのコンテンツをさらにリリースする計画も持っていると語った。
HYBEのIPビジネスは、どれも新鮮な驚きを与えてくれる。そのHYBEが次に手がけるのが、NFT事業だ。NFTは非代替性トークン(Non-Fungible Token)のことで、画像や音声などに唯一性を与えたもの。ブロックチェーン技術を用いて、その証明が行われる。アーティスト界でも注目が高まっている分野だ。
HYBEは昨年、韓国の大手暗号資産取引所アップビット(Upbit)を運営するドゥナム(Dunamu)と合弁会社を設立。担当者は「今年下半期のプラットフォームのオープンを目指しています。まだNFTに慣れていないファンの皆様も気楽にご利用いただけるよう、いろいろな方法を検討しながら開発中です」と話す。HYBEアーティストのファンの多くが既に使用するファンプラットフォーム「Weverse」と連携する方法も予定する。
HYBEはこれまでも、アーティストの創作物がデジタル空間で広まり、世界のファンたちが時間や空間の制約を受けずにコミュニケーションしながらコンテンツを鑑賞したり、アーティストとコミュニケーションが取れたりという形で事業を拡大してきた。そのため「NFT事業もこのような方向性で準備しています。またファンの方々がアーティストたちとコミュニケーションをする窓口を広げ、ファンコミュニティの活性化を支援するとともに、HYBEアーティストIPの価値を守り、ファンやアーティストたちを違法製品などから保護できる方向でNFT事業を展開していく予定です」(HYBE担当者)。
傘下レーベルの〈SOURCE MUSIC〉から誕生するガールズグループ・LE SSERAFIMは、デビュー曲の一部の先行公開に合わせて、デジタルコンテンツ“Digital Souvenir”をリリースした。ビジュアルイメージとアーティストの手書きメッセージ、また音声や音楽を組み合わせて選ぶデジタルグッズで、グループデビューの注目とともに話題を呼んだ。このようなデジタルコンテンツはNFTとも相性が良く、今後のHYBEのNFT事業に期待が高まる。
HYBEの幅広い取り組みは“ファン体験の拡張”という目的を軸としつつ、それぞれ個性を持って成長する。そのためHYBEは、BTSらアーティストのスター性のみに限らず、世界的に注目されるエンターテインメントライフスタイルプラットフォーム企業に成長できた。NFTを含め、新しい領域を取り込みつつ拡大するHYBEの手法は、今後ますます注目を集めそうだ。