特集:テックとアイドルのシナジー(Vol.1)

中国でも人気のVTuber・神楽めあ&花園セレナ&緋赤エリオに聞く、日中を股にかけ目指す“王道アイドル”像

 ソニー・ミュージックエンタテインメントは2021年12月15日、中国の動画配信サービス「ビリビリ(bilibili)」との共同プロジェクト、「バーチャルシンデレラプロジェクト」を発表した。日本、中国を中心にグローバルで活躍するバーチャルアイドルをプロデュースするプロジェクトで、作詞とクリエイティブディレクターは、元AKB48・HKT48の指原莉乃が担当する。

 国内だけでなく中国でも人気の高いVTuber、神楽めあ、花園セレナ、緋赤エリオの3名に、オーディションで選ばれた新人メンバー3名(雨音るな、UzuMe、星羅ミント)が加入し、グループ名「NHOT BOT」(読み:ノットボット)として、4月にデビュー曲『明日君の手を握れたなら』で、メジャーデビューを果たした。

 3人合わせると日本ではYouTubeで34万人以上、中国ではビリビリで194万人以上の登録者を持つ神楽めあ、花園セレナ、緋赤エリオに、なぜ、ここまでの人気を集めたのか。また個々で活躍してきた3人と新メンバーでどんなグループが生まれていくのか。話を聞いた。(臼井杏奈)

神楽めあ、花園セレナ、緋赤エリオがVTuberになったわけ

――まずは、自己紹介をお願いします。自分のキャラクターやチャームポイントを教えてください。

神楽めあ(以下、めあ):VTuberやってます。一番可愛いです!よろしくお願いします。チャームポイントは人と違うところ?歌や見た目と性格にギャップがあって、そういうキャラの高低差が(リスナーに)好かれているのかなと思いますねー……ははは(笑)。

花園セレナ(以下、セレナ):あなたの飼い猫、花園セレナです。私はメンバーの中で唯一のネコ耳キャラなので、可愛がっていただけたらいいなと思います。

めあ:それ(耳)も量産したらチャームポイントなくなっちゃう。

セレナ:たしかに(笑)。キャラクターは気まぐれなネコという感じで、ツンデレだと思っています。でもみんなからは甘い性格だって言われるんです。

緋赤エリオ(以下、エリオ):幻想騎士団・団長の緋赤エリオです。お色気系変態お姉さんです。よろしくお願いします。リスナーさんに「罵ってください」と言われることがあるんですけど、小学生レベルの罵りしかできなくて、下品な感じの……そこがチャームポイントです。

――みなさん、とても個性的ですね。そもそも、なぜVTuberになったんでしょうか?

緋赤エリオ

エリオ:友人と投稿した早口言葉の動画をVTuber企業がたまたま見つけて、声をかけてもらったのがきっかけです。元々配信活動もそんなにしていなくて、怪しい誘いだな……と思ったんですが、パソコンをあげると言われて、釣られました(笑)。一度は本業が多忙でVTuber活動を辞めたんですが、趣味程度でいいから続けないかと声をかけてもらって。

――そこから、どのように人気が出たんでしょう?

エリオ:声を使うことが好きだったので、台本を書いて、声劇を披露するという趣味の活動をしていたんですが、まったくリスナーが増えなくて。本業のこともあって、少し配信を減らすとリスナーの方々に話したんです。そうしたらファンの方達が「エリオがこんなに頑張ってるのに、報われないのはおかしい!」と掲示板などで拡散してくれて。そこから一気に登録者が増えるという“奇跡の夜”があったんです。

――ファンがファンを連れてきてくれたんですね。ほかのお2人は、なぜVTuberに?

神楽めあ

めあ:私は就活みたいな感じですね、仕事が欲しかったから。私は最初から環境に恵まれていて、VTuberというコンテンツの中では(早くから)知られる存在になれたので、リスナーさんやほかのVTuberさんに拡散してもらって徐々にYouTubeの登録者が増えた感じです。なので、これがターニングポイント、というタイミングはなかったんですよね〜。

セレナ:私も活動をコツコツと、リスナーの皆さんは何が好きかな? と考えながらやってきました。一歩ずつ歩んできたら、気がついたらこうなっていたという感覚で。VTuberになる前はアイドルや声優に興味があったんですが、体調などの影響で、仕事を長く続けるのは難しくて、一度は夢を諦めました。けれどVTuberはバーチャル世界で生きていける。アニメとはちょっと違う、リアルタイムに応援してもらえるアイドルのようなところがすごいなぁと思い始めました。

――声優やアイドルと違って、VTuberだからできることもある?

花園セレナ

セレナ:自分自身を出していけるところですね。(コンテンツを)決めるのも、やるのも自分。自己プロデュースは難しいんですが、リスナーさんと作り上げていけるのは魅力かな。

日本から中国へ、進出のきっかけは「気がついたら人気になっていた」

――いまは中国でも人気ですが、中国進出したきっかけは?

エリオ:私は活動当初から中国にも進出する予定だったんですが、中国語がわからないので怖気付いて、活動を始めて5か月くらい経ってから進出しました。仲のいいVTuber仲間で「ちゅこらら」*というグループをやっているんですが、そのメンバーが先に進出したので様子を見ていたり、YouTubeに「中国でも配信して」とコメントがきたりして、じゃあ(中国)行きます、と。そうしたらすでに私がYouTubeで発信した動画をビリビリに投稿してくれている方たちがいた。

*ちゅこらら=乙女おと、古守ちゆ、緋赤エリオ、眞白かのん、紫桃あのん、鈴宮鈴、アンフェール・ミレイによるユニット

セレナ:私は誕生日にきた一通のメッセージがきっかけでした。(送り主が)中国からで、「私はセレナさんのファンです。実はもうあなたのファンが中国にいて、セレナさんがよければサポートするので、中国でも誕生日記念の配信をしませんか」と言われたんです。

自分が海外の人たちに知られているという状況がピンと来なかったんですが、ビリビリでファンが切り抜き動画を投稿するアカウントがあって。せっかくなので配信にお邪魔させていただんです。そうしたら、いままで動画でみていた人とリアルタイムに接することができると聞いたリスナーさんが配信にバーっとコメントをくださって……。言葉の壁もあるし、国も違う私を受け入れてくれた。その熱意に恩返ししたいと思ったのが理由でした。新しいことを始めていくのは自分の勉強にもなると思って。

めあ:最初はファンの方の拡散で、ビリビリで知られるようになりました。日本文化やVTuberに興味がある海外の人はけっこう多くて、どこからか私のことを見つけてくれた。それでメールで進出のお誘いが来たんですけど、その頃は周りで中国活動している人もいないし、自分が向こうで人気あることも知らない。ビリビリも知らなかったから「フィッシングサイトなんじゃ……」と疑っていましたね(笑)。

――中国での活動は、日本と違いますか?

めあ:中国語は読めないけど、漢字で雰囲気を掴んでます。「不」「嫌」って書いてあったら、なんか悪いコメントかな、「好」は多分いいコメントだろうなとか。あとファンも(アニメなどの)日本文化に触れている人が多いので、そもそも日本語で会話できたり、ファン同士がリアルタイム翻訳してくれたり。

セレナ:内容的なところでいうと「普段どんな曲を聞いているんだろう?」とか「中国語の歌を日本語にして歌ったら喜んでくれるかな?」とか考えました。私は日本語なのですが、コメントで会話してお互いのことを知っていきました。日本も中国もリスナーさんと方向性を決めたりして、好みを掴んでます。中国でも人気のあるキャラクターのセリフをピックアップして使ったり、「ばか!へんたい!」とかは、“アニメで聞いた名セリフだ”と反応してくれたりと、好きなセリフがあるんですよ。

エリオ:ビリビリでは声を評価してくれるリスナーが多くて、“バーチャル沢城みゆき”*って言われていたんですが、ものまねとかが上手いというわけではなく……。私の飾らないキャラもウケたみたいです。

*沢城みゆき…日本の人気声優・ナレーター

――ファンの反応は日中で変わったりしますか?

エリオ:いまのところ違いは特に感じないですね。見ているアニメも聞いてる音楽も一緒ですし、同じなんだなってすごく感じる。

めあ:私もエリオちゃんと同じ感じ方なんですけど、細かく言うと言語の壁はある。だから(言葉で説明のいらない)子どもの悪ふざけみたいな、一昔前のインターネットみたいな簡単な、単純なコンテンツのほうがわかりやすくてウケてると感じるかな。ファンが動画の切りぬきを投稿してくれるんですが、パッとわかりやすいところを抜き出しているなと思いますね。

セレナ:めあちゃんが仰ってたのと同じで、私もわかりやすいものをやりたいなと思います。中国でウケたのは、私が抜けてるところ。例えば普通にゲームやってるだけなのに急に爆発して(ゲームキャラが)死んじゃったり、車のゲームで逆走していたり……頑張っているのにかわいそうっていう“不幸体質”なところが喜んでもらえたコンテンツの一つ。それをファンの方々がほっとけないネコだと、「ネコちゃんを助けて(救救猫猫呀)」という言葉で拡散してくれたんです。

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