そんなメリッサを慕う同僚も少なくない。「冥府（メイフ）」の2人はいうに及ばず、先輩である雪城眞尋、ましろ、先日3Dをお披露目した山神カルタらは、その繊細な感性・考えとも合い、コラボ配信・オフコラボにとどまらず、休みの日にともに時間を過ごすこともあるなど、親密な関係を築いていたことは記しておくべきだろう。

　メリッサは普段から自炊をすることが多く、料理配信をするだけではなく、配信内の話題やTwitter上では料理について言及することも多いライバーであり、コンビニ弁当・冷凍食品・Uber Eatsなどの宅配などに頼りがちなにじさんじのタレントのなかでも際立つ存在でもあった。同じく自炊をすることの多い雪城と馬が合いそうなのは想像に難くないところだ。

　オフで遊ぶことの多かった山神はこのように語っている。

「メリのほうが後輩なんだけども、後輩感が全くなくて。すごく仲良くしてくれた」

「夜中にめちゃめちゃ一緒に電話したりとか、遊びに行った日の帰りに『じゃあなんか配信するか―』って雑談とかできたのはメリだけだった」

「つかず離れずみたいな感じで一緒にいてくれて、めちゃくちゃ楽だったし、めちゃくちゃお世話になった」

　メリッサは雪城と山神を自身の3Dお披露目配信に呼んでいるだけではなく、雪城はメリッサと山神を、山神は雪城とメリッサを、3人各々が自身の3Dお披露目配信でゲストとして呼び合う仲になった。

　ましろとは「あまり配信をしない者同士」と冗談めかすこともあるが、2022年からは「メリッサとましろの白金フライデー」としてラジオ配信を開始するなど、ともに深い洞察眼・感受性を持つ者同士のディープでゆるい会話を夜な夜な繰り広げていた。

　リスナーから募集をしたトークネタから会話を広げつつ、「朝マックを頼もうとして思い切って違うメニューを頼んだとき」「お互いのツイートのリプライ欄を見たときの気持ち」「映画『ミッドサマー』についての雑感」「リップ・眉毛・マスクから始まる美容トーク」「にじさんじの歌枠を取るのが難しくなった」など、つぎつぎに話題が転がっていく。

　「初めましてのタイミングでホラー映画を見に行った」と初対面を振り返りつつ、その仲は雑談を通してみてもハッキリと伺い知れる。ラジオ配信を終えようとすると「イヤだ！」と駄々をこねるましろとそれをなだめるメリッサという、仲睦まじい姿を見せていた。

　メリッサが卒業を発表した直後の「メリッサとましろの白金フライデー #4」。ましろは「行かないで」「たすけて」「やめないで」「ひとりにしないで」と冗談めかして駄々をこねては、寂しさをハッキリとあらわにする。まるでリスナーの代弁者のような振る舞いに、涙腺が緩んだファンも多かったと思う。

「なんでVTuberになりたかったの？　という質問がコメント欄にきてるね。自分がやりたいことをできると思って始めた、自分のやりたいことをみんなと探すために始めた。が……っていう感じですね」

　ましろから「それ以上はいいんじゃないか？」とツッコまれ、こんな風に話を濁したことがある。このときの会話が2022年4月23日、この1週間ほど後に卒業を発表した。

　なぜメリッサは卒業するのか？　憶測と噂がかなり多く流れ、その理由は公にはされていない。YouTubeのメンバー限定配信のなかで諸々の経緯について卒業理由を明かしているが、この稿では触れることをあえてせずにおきたい。

　26日夜に配信された「メリッサとましろの白金フライデー 最終回」では、「実は1年半前から引退を決めていた。運営さんには引退時期を延ばしてもらっていた」と、ハッキリと口にした。これまでの活動は、明確なゴールがあった上で活動をし続けていたのだ。

　「いまの自分は、本当に自分らしくいれているのか？」「何をリスナーに届けることができるのか？」それを軸にして活動を常にしつづけてきたであろうと想像できる。それも先に記した内容を踏まえれば、自分の身をかなり強く削る自問も伴っていたであろう。

　いまノリにノッている「にじさんじ」の輪の中で、自分を押し殺して活動し続けることで多くの評価を得ることもできたはず。だがメリッサは、それを許すことはなかった。

　友人らと触れ合いながらも「メリッサ・キンレンカ」という存在から離れることを決めた、それは自身の生き方・フィーリングを選ぶという英断であり、リスペクトされてしかるべき選択だ。「メリッサ・キンレンカ」という大きな経験を背負ったその先の未来に、幸多からんことを。