【特集】社会は「ひとり空間」を求めている(Vol.1)
島村楽器が自分で組み立てられる「簡易防音室」を発売したわけ 個室空間と遮音性へのこだわり
エンタメ業界は個人で制作する時代に。「ひとり空間」がより求められる
ーー「ひとり空間」は密室となりますが、長時間籠もっていても大丈夫な工夫はしていますか?
佐土原:従来の防音室は遮音性能を確保するために壁を厚く取り、重量をあげた上で防音室自体を密閉する必要があります。よって照明と換気扇(ロスナイ)を設置する必要がありました。「S-OTODASU Ⅱ LIGHT」は組立構造上完全密閉型ではありませんが、まず室内に光を入れるため、天井とドア面には光の透過性が高い素材を採用しており、中に照明設備がなくても十分明るさが確保できます。また換気においては天井に回転式の換気口が施されています。普通の密閉型の防音カプセルでは照明器具を設置し、使用している間は換気扇を回す事が必須となりますし、また大半の簡易型防音室に於いても照明を設置し使用時に苦しくなったら(二酸化炭素濃度が上がったら)ドアを空けて喚起する必要性がありました。「S-OTODASU Ⅱ 」は、お客さま自身で天井の換気口の大きさを調節できるようになっていて、換気が簡単なんです。
――意外に思った使われ方などはありましたか?
渡辺:使用用途的には、オカリナ、ケーナ、クラシックギターやフルートなど、音がそれ程大きくない楽器の方が多いのは特長的でした。今まで家で普通に演奏していたんだけれども、こういうものがあるなら使いたいっていう方が結構いらっしゃったんです。周りへの配慮からくる需要ですね。
あと、用途ではないんですが、地方の方の購入が増えています。防音室はしっかりと遮音させるものですから、必要とされる方は、他の住宅が近くにある方やマンションなど密接に住居が立ち並んでいる地域に住まわれている方がほとんどです。ですから、本商品の発売で家と家の間が広い地域の方からの購入も増えたのは特長的でした。そういった地域の方が購入した理由は、周りの方への予防的配慮とプライベート空間を得るためというものでした。
――いままでになかったいい塩梅の商品ができて、「これを求めていた」という方が買われてるのですね。最後に、1人で過ごす「ひとり空間」は今後どうなっていくのかという考えを聞かせてください。
佐土原:いま音楽の世界ではボカロPなどのDTMで曲をつくるミュージシャンが活躍してたり、YouTuerやゲーム配信などエンタメの世界では個人で制作されている方が多いですよね。こういった「ひとり空間」は1人で1人の空間で何か作っていく方にはぴったりだと思うので、こういったエンタメの盛り上がりに合わせてどんどん広がっていくと思います。
また、もう少し広い目でみるとこういった作品を生み出す方々だけでなく、需要の要因として、オンラインで何かをしたり、PCで作業をしたりと1人で過ごす時間は増えていくと思うんです。だからこそ「ひとり空間」に対する意識は上がっていて、その需要に応えるためにアップデートも進む。「ひとり空間」の心地よさを求めると同時にお互いに周りへの配慮というのも一層高まっていて。こういった商品への所有願望が高まっていくと考えています、実際に製品を形にして発売することにより潜在的な意識も顕在化させながら「OTODASUⅡ」という製品でそれぞれの想いに寄り添っていければなと思っています。