コロナ禍で医療従事者として尽力し、配信者としても成長を続けるVTuber・健屋花那の挑戦
「告白しましょう。わたしはずっと声優になりたかったのです」
このように彼女が語ったのは、2021年7月から書評サイトtreeにて数度ほど連載された書評のなかでのこと。最後の書評となった第四回目において、最も人生に影響を与えた本であり最も読みたくない本として取り上げたのが、声優の大塚明夫が書いた「声優魂」だった。なぜ彼女がこの本を取り上げるに至ったかは当該コラムを一度読んで頂きたいところ。
健屋の「柔らかいところ」を刺し続ける棘。「夢」って弱点なんだね。
物心ついたときにあった憧れを捨てられず大学の演劇サークルへと参加し、現在ではバーチャルライバーとして活動する彼女は、演劇・芝居という営みやその奥深さに狂わされたといっても過言ではないはず。
その証拠に、にじさんじオフィシャルストアより販売される期間限定ボイスなどのシチュエーション・ボイスをほぼ毎月のように発表しており、脚本は自分で手掛けていることが多い。
加えて、黛灰と周央サンゴとともにTRPG(テーブルトークRPG)「狂気!ンゴ灰那山脈!」をプレイしたのをきっかけにして、TRPGにドハマりしてしまい、一時期配信がTRPGに偏ったこともあるほど。彼女にとって、演技をするということは相応の覚悟と熱量を注ぐものとして捉えているのが理解できる。
2020年6月28日には音楽原作キャラクタープロジェクト『電音部』に登場する鳳凰火凛を演じることが発表され、同じにじさんじに所属するシスター・クレアと星川サラとともに声優として同作品に関わっていくことになった。
「アニメ・ゲームのキャラクターをVTuberが務める」という事実そのものがインパクトを生むところだが、ソロ曲「CHAMPION GIRL」「Shining Lights(feat. PSYQUI)」も非常にインパクトある楽曲であり、ファンの心を鷲掴みにしたのも特筆すべき点であろう。
彼女が演じる鳳凰火凛は、2021年にリリースされた『電音部 ベストアルバム -シーズン.0-』ではCD版・配信版でもカバーを務めるなど、作品ファンからの人気も高いキャラクターとなったのだ。
先日3月19日には『電音部 2nd LIVE -BREAK DOWN-』が開催され、健屋共々にじさんじのメンバー3人も出演。これまでのキャラクターコンテンツシーンでは見られなかったアクションを次々と起こしている『電音部』とともに、彼女の活躍の場は大きく広がっていくであろう。
電音部で大きなヒット曲を得た彼女だが、2020年3月からは1〜2ヵ月ペースで歌ってみた動画を投稿し続けてきてもいる。
これまでも、さまざまなタイプの楽曲をソロ・デュオに関わらずリリースしつづけてきた。曲調・歌詞・メインボーカルかコーラスパートか、その時々で声色を変えて楽曲を表現しており、歌詞から浮かび上がる人物像や音楽に則って演技をしているかのよう。
普段はどこかザラついた声の彼女ではあるが、ときにはキレイな声に、ときにはより甘くスウィートに、曲によっては自分の声にエフェクトをかけて思い切って変えることも辞さない。まるで演劇や声優を目指して励んでいたところからの応用のようでもあり、一つの作品として良いものを目指すことに躊躇しないのも伝わってくる。