意外とわかっていないテクノロジー用語解説

CD以上に高音質な『ハイレゾ』の世界 複雑な定義をもう一度確認しよう

改めて、「ハイレゾ」の定義って?

 さて、デジタル音源の「基準点」が音楽CDということはわかった。そしてデータサイズなどの問題から圧縮音源の利用が中心だったコンピュータでも、処理能力の向上やメモリ、ストレージの大容量化により、非圧縮音源も問題なく扱えるようになってきた。そこで「より高音質な音源を扱いたい」という要求に対して登場したのが、音の解像度が高い、いわゆる「ハイレゾ(High Resolution:高解像度)」な音源だ。

 ハイレゾ音源の定義は、電子情報技術産業協会(JEITA)の定義では「16bit/48kHzよりも高い解像度のリニアPCMデータ」、日本オーディオ協会は「24bit/96kHz以上のリニアPCMデータやDSDフォーマットデータ」となっている。若干の差はあるが、いずれにしても基本的には「CDより高音質」という基準になる。

 「え、24bit/48kHzじゃ、16bit/44kHzのCDと比べて、大して高音質にならないんじゃないの?」と思うかもしれないが、サンプリング周波数の違いはともかく、量子化ビット数の違いは結構大きい。16bitに対して24bitでは2^8=256倍のデータを持つため、音の微妙な高低差などがしっかり記録できるのだ。

 ただし、フォーマットとして上記を満たしたデータでも、元の音源が音楽CDであれば44.1kHz/16bitと音質は同じだ。本気で「ハイレゾ」なデータを味わうのであれば、CDにする前のマスター音源の時点で、より高い水準でのサンプリングが行われている必要がある。

 幸い、現在流通しているハイレゾ配信のデータは、多くがきちんとマスター音源からサンプリングし直されたものとなっており、CDやMP3/AACでは聴こえなくなっている響きや空気感(演奏場の奥行きや歌手の息遣いを感じられる音情報)を楽しめる。この「空気感」につながるデータ量の差が、ハイレゾ音源の「高音質」さであり、醍醐味と言えるだろう。

 なお、こうした高音質なデータは、パソコン側でそのままでは扱えないケースもある。再生にはハイレゾデータの再生に対応した音源と再生ソフト、そしてハイレゾデータをイヤホンやスピーカーなどのアナログに再変換する(D/A変換)アンプも必要だ。そして最終出力装置であるイヤホンやスピーカーも、高音質なデータを正確に再現できるよう、高品質なものである必要がある(最近普及が著しいワイヤレスイヤホンでは、転送データ量が大きすぎてハイレゾを楽しめる製品は少ない)。これらを揃えると3〜4万円は軽くかかるのだが、この辺りがハイレゾを楽しむための障壁となってしまっているのも事実だ。

「ロスレス」とは違うの?

 最近はハイレゾと並んで、ストリーミングサービスなどでも高音質な「ロスレス」音源が利用できるところが増えている。この「ロスレス」は「ハイレゾ」とは違うのだろうか?

 ロスレス(Lossless)とは「可逆圧縮されたCD音源」のことだ。コーデックはサービスによって異なるが、FLACやApple Losslessなどが使われている。

 ロスレスの特徴としては、データは概ね44.1kHz/16bit〜24bitなので「ハイレゾ」とは言えないが、可逆圧縮なので、理論上、再生時に元のデータ(=CD音質)に戻せる(=欠損:ロスがない)。代わりに圧縮率は低めで、一般に圧縮後のデータサイズは3分の1〜3分の2程度だが、Bluetooth(1Mbps前後)でもなんとか飛ばせる範囲なのでワイヤレスイヤホンでも再生できるだろう。

 MP3/AACと比べると、圧縮時にカットされたデータも再現できるため「高音質」と言える。最近のモバイル回線であれば、パケット切れにでもならない限りは余裕で再生できるので、ストリーミングで流しっぱなし、という運用もできる。前述のようにワイヤレスイヤホンでも楽しめるので、ハイレゾよりも敷居が低く、手軽に高音質を楽しみたいという需要をカバーできる形式だ。

 最近はストリーミングサービスの多くがロスレスを導入しており、また一部でハイレゾ配信もストリーミング対応させたサービスが現れている。色々と準備は必要だが、きちんとした機材を使えば、音の違いは明白だ。ぜひ一度、ハイレゾの世界を味わってみてほしい。

関連記事