韓国警察の腐敗と“無能さ”描いた『レインコートキラー』 韓国コンテンツはドラマだけでなくドキュメンタリーも強い
膿を出す作業
正直にいって、どう取り繕っても韓国警察の腐敗した体制やこれまでの怠慢はごまかすことができていない。しかし、おそらくそれでいいのだろう。『レインコートキラー ソウル20人連続殺人事件』は、韓国の過渡期を写実することで、改善された今の韓国をより強く印象付けるために存在しているのだ。
だからこそ、今と昔の社会システムのコントラストを強めるために、警察の失態や「無能さ」を繰り返し強調する。そして、ユ・ヨンチョル事件をきっかけに警察のシステムが見直され、社会制度が変わったという。
Netflixという世界に発信する場で赤裸々に語ってみせることで、韓国社会の膿を出そうとしているのではないだろうか。そして、出し切ることで新たなフェーズに入ろうとしているのかもしれない。
これからの韓国エンタメとユ・ヨンチョル
筆者は、『レインコートキラー ソウル20人連続殺人事件』を韓国エンタメのひとつの区切りと考える。世界に向けて国家レベルの恥を晒すことは簡単ではなかっただろう。しかし、本作に登場する事件の映像や写真の豊富さをみれば、提供者や協力者の多さを感じる。おそらく韓国エンタメを世界に向けたプロモーションツールにするのは、壮大なプロジェクトなのだ。国全体が一丸となって外に向かおうとしている気迫を感じる。Netflixの韓国制作スタジオへの大規模投資は、今後の韓国エンタメの盛り上がりを保証しているようなものなので、とても楽しみだ。
一方で、話をユ・ヨンチョルに戻そう。実は、彼がモデルとなったのは『レインコートキラー ソウル20人連続殺人事件』が初めてではない。2008年には彼をモデルにした映画『チェイサー』が公開されており、韓国映画賞を総なめにした。レオナルド・ディカプリオがハリウッドでのリメイク権を取得しているが、どんな仕上がりになるのだろうか。アメリカのシリアル・キラーが映画界に大きな影響を与え続けるように、韓国の連続殺人鬼ユ・ヨンチョルも韓国のみならず、ハリウッドにも食い込んでいくのかもしれない。こちらも目が離せない。
■配信情報
Netflixドキュメンタリーシリーズ
『レインコートキラー: ソウル20人連続殺人事件』
独占配信中