AI婚活は"ちょっと気の利いた占い?” テクノロジーは近所のお節介焼きになれるのか、開発者に聞いた

AI婚活は"ちょっと気の利いた占い?”

 さまざまな分野でAIが導入されているが、婚活においても活躍の場を広げている。愛媛県が実施している結婚支援センター“えひめ結婚支援センター”では、AIを活用したサービス“愛結び”を展開。会員の行動履歴をビッグデータとして活用し、会員に合う可能性のある相手を紹介してくれる。

 人間関係が多様化し、“近所の世話焼き”に頼る婚活がいまや絶滅危惧種となりつつある現代社会。その役割をAIが担うことが一般化するかもしれない。そこで、愛結びを考案した国立情報学研究所情報学プリンシプル研究系教授の宇野毅明氏に、いま現在のAI婚活の実力、将来的にどこまで結婚支援において活躍しそうなのかなど、話を聞いた。

似た好みの人を参考に紹介

――まず、AI婚活の概要を教えてください。

宇野毅明(以下、宇野):そもそも、婚活サイトにおける候補者の紹介のされ方は3種類あります。ひとつ目は、 年収や身長といった、お相手に対する希望の条件を満たす人を紹介するタイプ。ふたつ目は、自身の趣味や好みがマッチする人を紹介するタイプ。みっつ目は、ECサイトや動画メディアのレコメンド機能を活用し、合いそうな人を紹介するタイプ。この3つ目が“AI婚活”と言えます。とは言え、各婚活サービスでは、この3種類をミックスさせて活用しているため、一概に「どこから、どこまでがAI婚活なのか?」は線引きが難しいです。

――愛媛のAI婚活は、どのような仕組みで紹介してくれるのでしょうか?

宇野:一言でいうと、“自分と好みの合う人の好み”から相手を紹介します。具体的には、多くのユーザーの趣味嗜好に関する情報がビッグデータとして蓄積され、そのユーザーの趣味嗜好と類似した他のユーザーのデータを参考にして自動的に選出する“協調フィルタリング”を活用しているのです。

婚活サイトでは、好みの人を“いいね(お気に入り)”できる機能があります。その情報を整理すると、いいねの傾向が似ている人がわかりますよね。ですので、「あなたと好みの似ている人は、この人もいいねしているよ」といった感じで紹介してくれます。

――趣味嗜好や性格など、パーソナルな情報から紹介するわけではないのですね。

宇野:はい。性格パターンや行動パターンといったデータは使用せず、ユーザーの“行動履歴”だけを見るのが協調フィルタリングです。

女性からのアプローチがカギ?

――実際、AI婚活の成婚率はどうなのでしょうか?

宇野:各婚活サービスが明確な数字を提示していないため何とも言えません。ただ、えひめ結婚支援センターの状況を見ると、普通に検索条件から見つけた人にお見合いを申し込んだ場合の受け率(13%)よりも、AIが推薦した人(「ビッグデータからのおすすめ」に出た人)にお見合いを申し込んだ場合の受け率(29%)は約2.5倍でした。

――やはり、AIが選んだ相手だとマッチしやすいのですね。

宇野:そうかもしれません。一般に婚活では“男性から女性に申し込むと受け率は低く、女性から男性に申し込むと受け率は高い”ということが知られています。AI婚活の伸びはむしろ女性にたくさん使ってもらってる恩恵が大きそうですね。

――と言いますと?

宇野:「AIが推薦してくれたから断られてもショックじゃなかった」と言う利用者さんの声がありまして。少し奥手の女性の背中を上手に押すようなことができたのが、AIの推薦した人の受け率が高かった要因のひとつかと思います。先述した通り、女性からアプローチした場合、受け率は高くなるため、“AIが適切な人を紹介できた”というよりも“AIが言い訳を与えたことにより、女性がいつもより積極的になれた”という見方も大切です。

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