『プロセカ』の“セカイ”はこれからも雄大に広がっていくーー歴史的な1stライブに感じた可能性

 スマートフォン向けゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』(略称:プロセカ)が、史上初のライブを1月28日、29日、30日に渡り、全7公演実施した。ライブタイトルは、『プロジェクトセカイ COLORFUL LIVE 1st - Link -』。本稿では、幕張メッセ 国際展示場 9-11ホールで開催された最終日の夜公演をレポートする。同時にABEMAにてオンライン配信、全国の映画館にてライブビューイングでも実施された貴重な公演である。

 プロセカは、東京・渋谷と、“本当の想い”から生まれた場所「セカイ」を舞台に、初音ミクを中心としたバーチャル・シンガーたち(ピアプロキャラクターズ)が5つのユニットに属する少年少女たちの“本当の想い”を見つけ出す青春物語を描く「アドベンチャーゲーム」を楽しみながら、クリエイターによる書き下ろし曲をはじめとしたボカロ曲を使用する「リズムゲーム」がプレイできるゲーム。なかでも、声優陣が務める少年少女たちとバーチャル・シンガーたちとが共に歌う光景は、ボカロシーンでも、かつてない見どころである。

 ダークチェンジした会場に舞い降りた初音ミクの声。これから、いろんなセカイへの冒険の旅に私たちを連れていってくれるようだ。早速ステージに姿を現したLeo/needは、5つのユニットの中でも唯一、バンドスタイルのガールズユニット。両サイドに激しい炎が舞い上がり、生バンドによる疾走感あふれるサウンドが響く会場で、初音ミクと「needLe」(作詞:作曲:DECO*27)、「フロムトーキョー」(作詞:夏代孝明、作曲:夏代孝明・渡辺拓也)を爽やかな歌声で届ける。

 前半戦は、それぞれのユニットを代表するオリジナル曲が流れだしていく。プロセカは、ユニットごとにキャラクター設定も音楽性もパフォーマンスも大きく異なることから、別のユニットが登場することで、客席の盛り上がりも形を変えていく様子を見せていた。たとえば、Leo/needに続いて演奏したMORE MORE JUMP!のステージ。初音ミクとエンジン全開の振り付けと親衛隊コールで「アイドル新鋭隊」(作詞・作曲:Mitchie M)を盛り上げたあとに、鏡音リンと「天使のクローバー」(作詞・作曲:DIVELA)を披露すると、そのアイドルらしさがあふれだすステージに、客席から輝くペンライトがより一層上下に揺れ始めたのが印象的だった。

 男女混合のストリートユニット・Vivid BAD SQUADは、初音ミクとこれまでの空気を打破してダンスモードへと切り替え、エレクトロな尖ったサウンドが中毒性をもたらす「Ready Steady」(作詞:q*Left、作曲:Giga)でクールに踊りだしたかと思えば、KAITOとは「シネマ」(作詞・作曲:Ayase)でハンドクラップを取り入れたダンスをパフォーマンス。斬新でドリーミーなミュージカルショーを「セカイはまだ始まってすらいない」(作詞・作曲:ピノキオピー)で初音ミクと展開してから、5人の手元にステッキが現れ、そのままのメンバーで「potatoになっていく」(作詞・作曲:Neru)へとつなぐのが、ミュージカルユニット・ワンダーランズ×ショウタイム。最もアンダーグラウンドなポジションにつく25時、ナイトコードで。は、初音ミクとともに、心を切り裂くギターの音色で悲劇を描いた「悔やむと書いてミライ」(作詞・作曲:まふまふ)でとどめを刺すように歌を送る。

 25時、ナイトコードで。によるMEIKOとの「アイディスマイル」(作詞・作曲:とあ)で小休憩に入ったあと、舞台裏で待機中の5つのユニットによる次のステージへ向けた会話が繰り広げられてから、MORE MORE JUMP!による初音ミクとの「メルティランドナイトメア」(作詞・作曲:はるまきごはん)をはじめとしたボカロ曲のカバーへ。

 25時、ナイトコードで。のうち、宵崎 奏&朝比奈 まふゆは初音ミクとともに、「カトラリー」(作詞・作曲:有機酸)を、東雲 絵名&暁山 瑞希は「ベノム」(作詞・作曲:かいりきベア)を歌唱。プロセカで見ることのできる3DMVには収録されていない特別なパフォーマンスである。まさに、キャラクターの人数だけ見せ方は変幻自在であることの証明ともいえる演出。ワンダーランズ×ショウタイムと初音ミクによる「ミラクルペイント」(作詞・作曲:OSTER project)で、リズミカルにスキャットすることで生き生きとした姿を見せた初音ミクからは、生命力すらも感じ取ることができた。

 セカイの旅の締めくくりには、ステージに揃って登場したバーチャル・シンガーたちが、「私たちも、みんなに歌いたい想いがある」と言葉を紡ぎ、「千本桜」(作詞・作曲:黒うさ)を熱唱。ステージに立つ少年少女たちにバーチャル・シンガーたちが自然と溶け込んでいたのは、少年少女たちとバーチャル・シンガーたちから客席へあふれだす“本当の想い”の強さが同等の量で表れていることが大きいのだろう。ボーカロイドとしてのバーチャル・シンガーとは異なり、意思を持った顔を見せるバーチャル・シンガーたちに生命感が与えられているのも、プロセカの醍醐味である。

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