『アイドルランドプリパラ』は「かつて“女児”だったすべての人」の憧れを取り戻すためのアニメ&ゲームである

真中らぁらと香田澄あまり、ふたりが象徴するもの

 Webアニメ『アイドルランドプリパラ』は、らぁらとあまりのW主人公と言える体制で物語が進んでいくようだ。らぁらが『プリパラ』そのものを司る象徴的存在ならば、あまりは「かつて『プリパラ』に夢中だったすべての元女児たち」の象徴と言えるかもしれない(本稿で“女児”と書くとき、それは実際の性別に関わらず「プリパラのことが好きなすべての子どもたち」を指すものとする)。

 幼いころ『プリパラ』を観て育った子どもたちは、いまちょうど中高生……あるいは大学生や社会人になっている人もいるはずだ。その誰もが、あまりのように日々の生活が上手く行っていないわけではないだろう。しかし、『プリパラ』に夢中になっていたころよりは世の中の大変さや不条理さに少なからず触れて、当時ほど無邪気に何かへの憧れを抱くことは難しくなっていると思う。かつてのキラキラした憧れを失い、いろいろな悩みを抱えながら日々を生きている元女児――そうした「かつて『プリパラ』に夢中だったすべての元女児たち」の最大公約数的、デフォルメ的なキャラクターが香田澄あまりなのだ。

 「み~んなトモダチ! み~んなアイドル!」がキャッチコピーである『プリパラ』は、キラキラした憧れの象徴だ。『アイドルランドプリパラ』は、あのころと変わらない「プリパラ」、そしてあのころと変わらない真中らぁらの姿を取って、成長した女児たちに「あなたは何度でも、何歳になってもキラキラの憧れを取り戻していいんだ」と伝えてくれるのだろうと期待している。

「アイドルランドプリパラ」オープニング『OPEN DREAM LAND!』ノンテロップver.

 『アイドルランドプリパラ』は、現行の女児向けシリーズとは異なる層がターゲットのコンテンツだ。それでいて、女児向けシリーズの続編でしか描けない形で、かつての女児たちに、当時と変わらない夢や希望や憧れを届けようとしている。当時とは生活様式も変わったであろう、できる限り多くの元女児たちに本作を届けるために選択されたのが、Web配信アニメとアプリゲームという「スマートフォン1台で完結する」媒体なのも、納得がいくところだ。

 アプリゲームでは自分の分身であるマイキャラを作ったり、ほかのユーザーと繋がれる要素があるものと推察されるので、これらによってどんな楽しさが広がっていくのかが気になるところ。私たちが香田澄あまりのように、もう一度「プリパラ」の世界で、かつて思い描いた“憧れの自分”へと戻れる日は、もうすぐそこまで来ている。

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