にじさんじ・卯月コウ、ゼロ年代オタク趣味全開の配信スタイルに覗く“誇りと信念”
2022年1月22日と23日の2日間に渡って開催されるライブイベント『にじさんじ 4th Anniversary LIVE 「FANTASIA」』。にじさんじに所属するバーチャルタレント男女16名が出演するライブイベントであり、ぴあアリーナMMで開催予定だ。同事務所にとっては2022年が始まっていきなりの大型イベントとなる。
イベント出演者にスポットをあてて執筆してきたこの2か月、シェリン・バーガンディ、椎名唯華と順々にピックアップしてきた。今回は、にじさんじでもカルトな人気を誇る卯月コウについて書いていこうと思う。
にじさんじSEEDs一期生のシークレット枠として、2018年6月6日にMirrativにて初配信、デビューを果たす。元一期生の月ノ美兎に憧れ、影響を受けたタレントのひとりである。
彼が月ノ美兎から受けた影響について端的に言い表すのは難しいが、以前筆者は月ノ美兎について「『VTuberとはメジャーシーンに対するカッティングエッジである』というイメージを多くの人に植え付けてきた、まさしくVTuberの顔役のひとり」だと評した。
どこかアングラで、オーバーグラウンドでは扱いにくいであろうテーマや領域は、ひと昔前までは「サブカルチャー」と呼ばれ、現代においては一時代を築いたものとして徐々に過去のものとされつつも、数々のコンテンツは現在でも多くの人に強い影響を与えている。
卯月もまた、そのシーンを好きな者でないと深く語ることのできないようなマニア性や思索、アイディアを持ったタレントの独りである。美少女ゲームやギャルゲーに造詣深く、『D.C.II ~ダ・カーポII~』『沙耶の唄』『CROSS†CHANNEL』『月に寄りそう乙女の作法』などのタイトルのほか、ビジュアルアーツのゲームブランド〈key〉の主要タイトルといった往年の名作18禁ゲームをプレイしていることをデビュー直後の配信で切り出し、後に『ToHeart2』『ときめきメモリアル2』『アイドルマスター シャイニーカラーズ』『Summer Pokects』を配信上でプレイしている。その度に自身の思い出やこだわり、『美少女ゲームとは……』という思いを切々と語ってきた。
【ストロベリームーン】陽キャ中学生が美少女ゲームを語ったりする
「涼宮ハルヒ」シリーズなどのライトノベルにも目配せしており、アニメも京都アニメーションの作品を皮切りにして『テニスの王子様』『金色のガッシュベル!!』『ヒカルの碁』を愛好。マンガ作品にも、それぞれ自分なりの知見や考えを持つほどに精通しているのが配信を見ていてもうかがい知れる。
#にじさんじテニスの王子様トーク
卯月コウのコンテンツへの愛情を表すエピソードとして最も象徴的なのが、彼が『ラブライブ!』のライブへと参加した際のエピソードだ。「『ラブライブ!』のライブへ行った帰りに雪が降っててその時食べた牛丼がめちゃめちゃ美味かった」という会話ネタは、デビュー当初から何度となく彼が話してきており、長年彼を追いかけている人が「またか」とツッコむような鉄板ネタである。
最近では「ラ帰雪牛」とも略され、もはや卯月本人が天丼ネタとして繰り出す流れもあるほど。彼と彼のファンとの間で産み出されたネットミームといってもいいだろう。その後リスナーから「自分にとっての思い出の味」を募り、一つの配信として昇華するまでになった。
みんなのラ帰雪牛 ~思い出の味~【卯月コウ/にじさんじ】
ちなみに、降雪が話題となったラブライブのライブ公演といえば、2014年2月8日・9日に、さいたまスーパーアリーナで開催された『μ's →NEXT LoveLive! 2014 ~ENDLESS PARADE~』だ。この日は交通機関の運休が続出するほどの大雪に見舞われ、帰宅困難者が出る状況であり、Twitterなどでも大きくニュースとして取り上げられていた。