「いまは何年ですか!?」2021年に“歪み”を生じさせた懐かしの新作ゲーム5選
2021年が間もなく終わろうとしている。
今年も家庭用機からスマートフォン、パソコンまで多彩な新作ゲームが発売され、様々な話題を振りまいた。しかし、特に家庭用ゲーム機に関しては例年にも増して、ひとつの出来事が際立っていた。それは数十年以上も前に発売されたタイトルの続編、リメイク、そして復刻(リマスター)が相次いだことだ。
元々、そのようなタイトルが現代によみがえること自体は今に始まったことではない。ここ4~5年の間にも多くの懐かしのタイトルが現代のゲーム機向けに発売されたり、『ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ』に象徴される小型のゲーム機が制作されるなど、話題を呼んできた。同時に「いまは何年だ!?」とのツッコミもSNS上で繰り広げられたりしたとか、しないとか。
ただ、2021年は例年以上に懐かしのタイトル復活が相次ぐと同時に、大きく注目される傾向の高い1年であったように思える。筆者個人が買った新作ゲームでも、今年はいつになくその手のタイトルが目立っていた。
そんな2021年発売の懐かしのタイトルの中で、話題を集めたものから好評を博したものまで、全部で5本ピックアップし、振り返ってみたい。これからの年末年始、あえてこれらのタイトルを購入して遊んでみるのも一興だ。
『帰ってきた 魔界村』(Nintendo Switch / PlayStation 4 / Xbox One / Steam)
1985年にカプコンよりアーケードゲームとして誕生し、ファミリーコンピュータを始めとする家庭用ゲーム機へも移植されたステージクリア型横スクロールアクションゲーム『魔界村』の最新作。2007年のPlayStation Portable用ゲームソフト『極魔界村・改』より約14年の沈黙を経て、2021年2月にNintendo Switch用ダウンロードソフトとして登場した。その4ヶ月後の6月にはPlayStation 4、Xbox One、PC(Steam)向けにも発売されている。(※いずれもダウンロード専売)
初代『魔界村』とその続編『大魔界村』をモチーフに再構成したリブート作品で、ステージクリア型アクションゲームとしての基本はそのままに、攻略ステージの選択、主人公アーサーの能力(スキル)強化を図る「オービィの木」といった新システムを導入。シリーズおなじみの武器と魔法にも新種が追加されたほか、前述の「オービィの木」によって2種類の武器を装備したり、威力の強化を図れるようにもなった。また、全4種類の難易度、残機制の廃止、リトライを繰り返すと使用可能になる難易度低下機能といった現代のアクションゲーム特有の工夫や救済措置も実装。シリーズ恒例の2周目にも、ステージの地形が以前とは激変する「深魔の世界」が登場し、より無慈悲極まりない魔界の脅威を体験できる。
発表されたのは2020年12月開催の『The Game Award 2020』。高い難易度が語り草とされるゲームの唐突な復活は国内外を問わず、大きな注目を集めた。
実際の製品版も現代化された魔界村というに相応しい出来で、手描き調の美しい映像と各種新要素、そしてまったく媚びない高難易度で鮮烈な印象を残す内容に完成されている。特に最高難易度「伝説の騎士」はシリーズ全体で見ても歴代最難関とも言える難しさ。ただ、残機性廃止のおかげで再挑戦がしやすく、諦めず挑み続けることで突破口が見えてくる難易度調整の緻密さに気付きやすくなっている点は秀逸だ。
しかし、残機性廃止を免罪符に過剰に難しく設定しすぎている印象も否めず。また『極魔界村』から再び隠されたアイテムを探す探索要素が続投しているが正直、蛇足感が否めない。2周目以降に登場する本当の最終ボスと対決する際、この探索要素の完全攻略が必須になるのも正直、如何なものかと筆者は感じた次第だ。
とはいえ、敵に攻撃を命中させた際の優れた手応えにアイディアに富んだステージ上の仕掛け、スキル強化システムなど、光る部分や今後の発展を期待したい部分も相応にある作品だったことは書き記しておきたい。仮に将来、再び帰ってくるなら、今度は最後まで純粋にステージクリア型アクションゲームとして楽しめる魔界村を望む限りだ。
なお、初代『魔界村』と『大魔界村』は、同じく2021年発売の『Capcom Arcade Stadium(カプコンアーケードスタジアム)』にてアーケード版が復刻を果たしている。今回の新作を通して魔界村に興味を持ったなら、こちらもぜひ。
『New ポケモンスナップ』(Nintendo Switch)
1999年にNINTENDO64用ゲームソフトとして発売された『ポケモンスナップ』の続編。前作から22年以上もの空白を経て、Nintendo Switch用ゲームソフトとして発売された。
ゲームの内容は前作とほとんど変わらない。ポッド型の乗り物「ネオワン号」に搭乗し、カメラを構え、舞台となる土地に生息するポケモンたちの写真を撮影していくというもの。公称ジャンル名は「カメラアクション」だが、正確にはレール型の3Dシューティングゲーム(※自動的に移動していくステージを舞台に、照準で狙いを定めながらターゲットを撃っていくタイプのシューティングゲーム)ともいえる作り。シャッターチャンスを狙ったり、カメラを360度見回し、周辺の様子を探るなどの箇所がそれっぽい遊び心地を表現している。
前作のNINTENDO64版と異なる点では操作があり、ジャイロセンサーによる直感スタイルが新登場。さらにオンライン機能が実装され、撮影したポケモンたちの写真を自分のページにアップロードしたり、写真の合計得点などを世界中のプレイヤーと競い合う遊びが楽しめるようにもなった。ポケモンも最新の『ポケットモンスター ソード・シールド』も含んだ200匹以上が登場。ストーリーとキャラクターも一新されているが、前作を遊んだことのある人なら、思わずニヤリとしてしまう設定も凝らされている。
特に前作から際立って変わった部分はなく、素直な続編に徹した仕上がりだが、カメラを構えてポケモンたちを撮影していくゲームプレイ部分の独自性は、今なお色褪せない魅力と面白さがある。大幅にパワーアップしたグラフィックとポケモンたちの容姿もインパクト抜群。なかでもポケモンたちの可愛らしさ、動きの細かさは見ているだけでも楽しい気持ちになる。ジャイロセンサーによる操作も、主にズーム撮影時の微調整にありがたいものになっているほか、本当にカメラを構えて撮影しているかのような手触りが秀逸だ。
撮影した写真の全評価に要する時間が長いといったテンポ周りの難点、調査レベルを上げながらステージを解禁していく過程における若干の作業感こそあるものの、現代版『ポケモンスナップ』としての完成度は盤石。ひとつのシューティングゲームとしても非常に取っつきやすく、安心して遊べる作りになっているので、それ目的で楽しんでみるのも一興だ。
ちなみにNINTENDO64版は、コンビニエンスストア「ローソン」にゲームカセットを持っていくことで、ゲーム中に撮影したポケモンの写真をシールに印刷してくれるサービスが行われていた。実は今回の新作もローソンのプリントサービスで可能だったのだが、残念ながら2021年9月30日をもってサービスを終了している。
また、筆者個人としては新作が発表された当時より、テレビコマーシャルには前作のテレビコマーシャルに出演された”ポケモンおじさん”こと俳優・綿引勝彦氏の再登場(および復活)を期待していた。だが、綿引氏は2020年12月30日に永眠。22年の時を経て、”ポケモンおじいちゃん”になって登場する夢が幻に終わってしまったのが本当に残念でならない。
改めて、”ポケモンおじさん”こと綿引氏のご冥福をお祈り申し上げたい。
『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者・うしろに立つ少女』(Nintendo Switch)
1988年にファミリーコンピュータディスクシステム用ゲームソフトとして発売された、コマンド選択型テキストアドベンチャーゲームのリメイク。1998年にスーパーファミコン向けに発売された『ファミコン探偵倶楽部PARTII うしろに立つ少女』のリメイク版以来、実に23年の時を経て、Nintendo Switch用ゲームソフトとして復活を遂げた。
「移動する」「聞く」「見る・調べる」などのコマンドを選択・決定して様々な情報を集め、進めていくゲームシステム、ストーリー設定は原作を踏襲。そこに豊富なアニメーションと、声優陣によるフルボイス演出がプラスされた、現代特有のアレンジが加えられた豪華版に仕上げられている。特に声優陣は驚くほど豪華な面々が揃っているのに加え、ヒロインの橘あゆみ役にはいまや幻のシリーズ3作目と言われる『BS探偵倶楽部 雪に消えた過去』にて同役を務めた皆口裕子氏を起用するという、ファン垂涎のサービスが図られている。
ゲーム本編も原作の煩わしい箇所が大きく調整され、より遊びやすい作りへと進化。フルボイス演出が苦手な人に配慮した台詞の効果音表示設定に、音楽を原作のディスクシステム版のものに変更するなど、オプション周りもかゆい所に手が届いていて、様々な要求に応えてくれる作りになっている。ストーリーも基本は原作と一緒ながら、台詞の加筆で場面の繋ぎが自然なものになるなど、改良が図られた部分もいくつか。声付きで喋るようになったことで、ひと際個性が増したキャラクターたちの存在も見逃せない。
2019年9月放送の「Nintendo Direct」にて2020年発売と報じられるも、諸事情による延期で実に1年半の時を経て発売された本作。その中身は豪華版という表現が相応しい力作に完成されていた。特にストーリーに関係しないモブの人物にまで、容姿から動きまで事細かに設定された作りは圧巻。フルボイス演出も驚くほど馴染んでいて、おかげで一部の場面は原作以上に涙腺を刺激するものに化けた。ストーリーも30年以上前のものながら、その二転三転する展開とキャラクターたちの個性の強さは全くもって色褪せていない。なにより、1998年のスーパーファミコン版発売当時に期待された、『消えた後継者』のリメイクが23年越しに実現したのは、当時待ち望んでいた人間のひとりとしては感無量の極みだ。
リメイクの宿命ということで、原作特有の恐怖感が薄れたり、演出が弱くなった部分も散見されるが、それを補って余りある魅力が満載の任天堂らしからぬストーリー重視の力作。嬉しいことに発売後の売り上げも良好だったようで、ぜひこの勢いのまま、今や遊ぶのは不可能同然の『BS探偵倶楽部 雪に消えた過去』の復活につなげて欲しいところだ。