キズナアイ登場から5年、すべての「バーチャル」が同じステージにーー2022年はさらなる“越境”に期待

すべての「バーチャル」が集った2021年

 VTuber、VR、メタバース。これらを引っくるめて「バーチャル」なものとして眺めていた身にとって、2021年を一言で表現するならば「交わった年」になる。それぞれ独立して歩んできたカルチャーが、なにかに導かれるように、ひとつの道に集まり始めた。そんなシーンが多かった一年だろう。

バーチャルとリアルが交わり始めた

 まず、VTuberとYouTuber・ストリーマーが交わり始めた。PewDiePie、El rubius、そしてHIKAKINと、著名なYouTuberがバーチャルなアバターを手にし、その姿で配信を行った。数回きりの「遊び」で終わることもあれば、VTuberとして本格的に転向したり、あるいは生身のYouTuberと並行で活動するケースも見られた。すとぷりやP丸様。といった、顔を出さずイラストで自身を表現してきた配信者や、徳井青空、椎名へきる、小野友樹といった声優がアバターを得て活動を始めるという出来事もあった。

ヒカキン、今後はVTuberとして活動して行きます。

 とりわけ、プロゲーマーやゲーム系ストリーマーは、VTuberと大きく距離を縮めつつある。彼らの共通言語はゲームであり、とりわけ『Apex Legends』は、様々なコミュニティの垣根を超えたコラボを生み出している。そして、VTuberのようにLive2Dアバターを獲得し、その姿でVTuberと共演することも、もはやめずらしい光景ではなくなった。「バーチャルな姿」はもはや一般的で、VTuberであるか、あるいはストリーマーであるかは、職種ではなく本人のスタンスの違いに収まりつつある。

 バーチャルからリアルへの進出も増えつつある。バーチャルユニット・VALISは、11月実施のワンマンライブにて、いわゆる「中の人」と呼ばれる存在が「オリジン」という呼称で出演した。来年2月には「オリジン」によるライブも企画されており、リアルとバーチャルを股にかけるアーティストへと拡張を始めつつある。RIOT MUSIC所属の長瀬有花も、「生身の本人」が(首から下ではあるが)登場するようになった。にじさんじはライブイベントにてARの本格導入を開始し、所属タレントがリアルの側へ立つ場面が一気に増えた。越境の試みは着実に増えており、そして好意的に受け止められるケースも増えつつある。リアルとバーチャルは、もはや別々のものではなく、着実にひとつの道へと交わり始めている。

変わり続けるVTuber業界

 今年のVTuber業界は、長く活動するプレイヤーの移籍や組織化も多く見られた。2018年から活動を続けるかしこまりは、10月にVTuber事務所・Re:AcTへの所属を発表した。同じく10月には、株式会社Donutsが新規プロダクション「MIKUCAN」を設立し、これまで同社運営だったタレントに加え、株式会社BitStarより事業取得した「Akihabara Lab」所属タレントなどがここの所属となった。

 また、同月には、渋谷ハルがCrazy Raccoon、まふまふ、そらるとともに、VTuber事務所「merise」を新設した。VTuberとストリーマーがタッグを組む形となる、上述のVTuberとストリーマーの接近における、ある種の到達点と言えるだろう。そして、VTuberネットワーク「V-Clanネットワーク」には、ミライアカリ、天開司、VShojoが合流し、さらにすべてのVTuberにネットワークへの参加を解禁した。V-Clanネットワークの規模は現在、世界有数といってもよいレベルとなりつつある。長く活動するため、あるいは新たな活動を始めるために、多くのVTuberが活発に動き、かつては見られなかった組み合わせが生まれつつある。

VRChat生まれの才能と、メタバースの芽生え

 VRChatカルチャーもさらなる隆盛を見せた。VR音楽グループ・AMOKAは、 ホロライブプロダクションのAZKiの7th LiVEにてオープニングアクトに抜擢され、バーチャルアーティストのキヌは 『SHIBUYA オープンマイク Powered by 渋谷渦渦』にてオーディエンス賞を受賞した。モーションアクターチーム「カソウ舞踏団」のyoikamiは、初のVR開催となったSXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)のアバターダンスコンテストにて優勝を果たした。VRChatにて醸成された才能は、いまやVRChatの内側にすらおさまらないものへと成長を遂げている。そうした才能の発する熱量に引かれてか、YouTubeを拠点とするはずのVTuberがVRChatへ遊びにいく場面も増えつつある。

 そして、10月にザッカーバーグが「メタバース」と唱えたことで、世界は一変した。VRChat、clsuter、NeosVR、Roblox、Fortnite、Decentland、The Sanbox、そしてSecond Life……これまで各々異なる肩書を名乗っていたプラットフォームが、すべて「メタバース」というひとつの枠の中に集結することになった。REALITYやVARKといった配信・ライブ向けプラットフォームも、ワールド機能を組み込みメタバースへと接近しつつある。そして、バラバラの呼び方だったバーチャルな世界たちに「メタバース」というひとつの言葉が与えられたことで、多くの人たちが注目を始めた。

 いまやメタバースと呼ばれる場所には、様々な人たちが、様々な思惑で集まりつつある。なかにはよこしまな思惑も見られる。しかし日産自動車は、VRChatで活躍するクリエイターとともに、バーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」を作り上げた。ワールド制作に加え、プレス向けお披露目イベントや、「カソウ舞踏団」によるツアーイベントまで、コミュニティの住人とともに作り上げている、コミュニティの強いリスペクトが見られる事例だ。メタバースの住人と、メタバース進出を狙う企業が、ともになにかを作り上げることは可能であると証明しているだろう。

 そうしたメタバースブームの最中、サンリオが12月にVRChatにて音楽フェス『SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland』を開催した。キズナアイ、電脳少女シロ、ミライアカリをはじめとした名だたるVTuberに加え、AMOKAとキヌが出演者に抜擢された。VTuberとVRChatアーティストが同じ「バーチャルアーティスト」として舞台に並ぶ、大きな転換点ともいえる出来事だった。同フェスはそれにとどまらず、エリアのひとつにVRChat上のクラブ「GHOSTCLUB」を主催する0b4k3が手掛けるクラブエリア「ALT3」が常時ほぼ満員という大盛況を見せ、さらにフェス出演者のひとりである因幡はねるが会場を訪れるという出来事もあり、すべてのバーチャルが一同に会するような祝祭がそこにあった。



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