「メタバース」巡る動きに賛否 未成熟の文化こそ大事にしたい“現地のいま”

「メタバース」巡る動きに賛否

 VRイベント『バーチャルマーケット2021』が絶賛開催中だ。約80社にものぼる企業が出展し、ビジネス的にも大きな注目を集めているが、ユーザーたちによるイベントも盛んだ。公認配信者による配信や、有志ツアーコンダクターによる会場ツアーなどが、毎日のように開催されている光景は、正しく「祝祭」と言える。『VRChat』は特にユーザー発文化が根強いが、いまや世界的なイベントとなりつつあるバーチャルマーケットにもそのカラーが息づいている様は、メタバースが示す未来のひとつだろう。

【#Vket2021】ひよクロのパネルが展示⁉撮りに行かなきゃポポ‼【家入ポポ / ひよクロ】

 また、『バーチャルマーケット2021』会場にはVTuberも訪れている。先日には、VTuber事務所・774 inc. のグループ「緋翼のクロスピース」所属の家入ポポが、会場に設置された自分たちのパネルを見にいく、という配信を実施した。企業所属のVTuberがこうした配信を行うのはめずらしい。同期メンバーや、ともに訪れたファンといっしょに会場を巡る様子はさながらオフ会のようであり、とても和やかな空間が広がっていた。VTuberとメタバースがどう交わるか、一つのケースを提示するような配信だったように思う。

 そうしたなか、12月10日にメタ社(旧:フェイスブック社)が動いた。ソーシャルVR「Horizon Worlds」の一般提供開始である(北米のみ。日本での展開は未定)。VR上で友人たちと交流し、公式につくられたワールドやコンテンツを楽しめる、基本をおさえたソーシャルVRだ。また、ユーザー自身もワールドなどを作成・公開できる点は、先行するソーシャルVRにも共通するところ。全容はまだ見えないものの、「メタバース」という概念を一気に広めた同社が、「Horizon Worlds」にてどのようなメタバース観を提示してくるか、今後も注目していきたい。

 国産のソーシャルVR『cluster』も、12月9日にQuest 2への正式対応が発表された。VRイベントプラットフォームから出発した同サービスは、現在はユーザー作成のワールドが多く、充実したソーシャルVRへと発展を遂げている。VRに加えてスマホにも対応しており、敷居の低さは随一だったが、Quest 2対応がなされたことでそれは決定的になったと言えるだろう。「バーチャル渋谷」を筆頭に国内の法人活用も盛んであり、多くの人が訪れやすい国産メタバースとして、今後さらなる活用が期待される。

 一方で、眉をひそめてしまうようなできごともみられた。12月7日に、仮想通貨取引業者4社が「日本メタバース協会」の設立を発表し、大きな物議を醸した。メタバースに縁のない業者による協会設立に加え、代表コメントの「メタバースを支えるブロックチェーンやNFT」という一文には、筆者も首を傾げた。メタバースにブロックチェーンやNFTは必須の技術ではなく、それを必須かのように語るさまは、「門外漢による利権狙いの参入」と読み取れてしまう。現時点では具体的な活動内容は提示されていないが、自分たちの住む場所を荒らされるのでないかと、VRChatユーザーを中心に大きく反発が起こっている。

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