『バーチャルマーケット』の体験から、メタバースの未来を考える

VRイベントから考えるメタバースの未来

企業がメタバース上のイベントに出展するメリットとは

 さて、それでは企業がメタバース上のイベントに出展する狙いはどこにあるのだろうか。もちろんその場で商品を購入してもらえることもメリットの1つだが、それは副次的な狙いだろう。

 ひとがバーチャルマーケットというメタバース上のイベントに協賛することの話題性だ。メタバース上で開催される大規模イベントというのは国内外を見ても珍しく目新しいものだ。そんなイベントに協賛出展すると、“先進的でユニークなことをしている”という印象を消費者に与えることができるだろう。またその話題性から各種メディアなどで取り上げられたり、SNSなどでの情報拡散も期待できる。

 個人的に最も大きいと考えるのが、メタバース上だからできる”体験”だ。メタバース上の空間は現実世界の物理法則に引っ張られることがない。端末の性能上の制限やブースの広さとの兼ね合いから、完全に自由に好き勝手な展示をすることはできないが、重力を無視した巨大なオブジェクトを配置することもできるし、家具のような現実世界では重い物も片手で掴んで好きなように配置することもできる。そういった特徴から生まれる“ユーザーの体験”は非常にユニークで、企業にとってもそれを提供できることは大きなメリットだと言えるだろう。

 筆者はメタバースで鍵になるのは“体験”だと考える。メタバースという仮想空間の中に入り、そこで様々な体験をする。それはWebサイトを見る、YouTubeなどで動画を見るという受動的なアクションではなく、もうひとりの自分自身がいるもうひとつの世界で、現実ではできないような(もちろん現実でできる体験でも良いが)体験をする。

 そのユーザ体験が現実世界にも影響を与える。今回のイベントで言えばそれが企業に対する印象を良くしたり、購買意欲につながったりといった結果をもたらすだろう。

メタバースはあくまでもインフラである

 いまは「メタバース」という単語ばかりが先行していると感じている。徐々に盛り上がりを見せていた言葉だが、メタ社(旧:フェイスブック社)の社名変更で一気に話題になることが増えた。

 だが、筆者はメタバースはあくまでも土台だと考える。その土台の上にどのようなコンテンツを乗せて、ユーザーにどんな体験をさせるかに注目するべきだろう。

 『バーチャルマーケット』で言えば、コンテンツが出展者のブースであり、そこできる体験がいちばん大事な部分だ。

メタバースの未来はどこにあるのだろうか

 メタ社のマーク・ザッカーバーグは7月22日のThe Vergeの記事で、メタバースは「モバイルインターネットの後継者」だと述べている。この発言には筆者も同意する部分が多く、メタバースというのは特別なものではなくなると考えている。

 いまは遊んだり、誰かとコミュニケーションをとるなど、エンタメ寄りのコンテンツが多いのは事実だ。また今回のメイン会場になったアプリケーションであるPC版「VRChat」の実行にはそれなりに性能の良いデバイスが必要なため、現在のインターネットのように年齢や性別を越えて国民の多くが当たり前に使える、という状況にはなっていない。

 すでにスマートフォンでプレイできるメタバースプラットフォームも登場している。今後も技術革新が進むと、いつでもどこでもどんなデバイスでもメタバース空間に接続できる日が来るだろう。

 そうなった未来では、人々が当たり前のようにメタバースに接続し、いまネット通販で本や服を買うように、メタバース上で実際に試しながら買い物をするようになるかもしれないし、Netflixなどの動画サブスクリプションサービスがメタバース内で動画コンテンツを提供し、それをなかで誰かと一緒に見られるようになる、といったことも可能になるだろう。

 メタバースの普及にはこれまでのインターネットのような、バナー広告を見るだけ、動画広告を見るだけという受動的なアプローチではなく、インタラクティブな体験が鍵になるはずだ。

 インターネットが我々の生活に溶け込んだことによって、ライフスタイルは大きく変化した。今後はメタバースがわたしたちの生活に溶け込むことでライフスタイルが変化することになるだろう。まさにそれは次世代のインターネットといえる。

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