美川憲一がカジサックとコラボ 和田アキ子、吉幾三、SNSの波に乗る大御所歌手たち
先導を切った「ラスボス」小林幸子
上記のように、大御所の歌手が次々と柔軟な挑戦により、本来のファン層よりも幅広い世代から注目を集めているという現在。さかのぼると、YouTubeやYouTuberが一般化する少し前である2013年頃。同じく動画配信サイトである「ニコニコ動画」で、演歌歌手の小林幸子がヒャダインの人気楽曲「ぼくとわたしとニコニコ動画」を“歌ってみた”というものがあった。盆踊り風のアレンジや、かつての『紅白歌合戦』で披露していたような巨大衣装なども話題となり、3日で100万再生を突破。その後ネット上では「ラスボス」という異名で親しまれ、ニコニコ動画が主催するイベントにも多く出演してきたという経緯がある。おそらくこれが、大御所の歌手がネットを通じて、自ら新しい挑戦を行った最初の大きな出来事ではないかと思われる。YouTubeに比べ、「ニコニコ動画」は一般層というよりも、少しニッチなネット民と呼ばれる視聴層ではあるが、先陣を切り“成功”という前例を作った小林幸子の功績もまた大きいのではないかと思う。
これらは一見簡単なことのようにも見えるが、そのキャリアに甘んじることなく、時代の流れや新しいメディアに柔軟に挑戦するその姿勢は、若者など広い世代の心を動かしているのは間違いないだろう。同時にYouTubeやSNSなどによって、過去の楽曲にすぐにアクセスできるようになった今、“古い”や“新しい”に関係なく、歌手として再び評価されるという出来事も起こっている。世代の垣根を超え、老若男女が楽しめるメディアやコンテンツとして、これからもYouTubeやTik TokなどのSNS発の化学反応に期待していきたい。