すべては視聴者のために にじさんじ・加賀美ハヤトの「娯楽」として生きる覚悟

 先輩ライバーである葛葉とともに、オリジナル楽曲の作詞制作を配信していたなかで、歌詞に悩む葛葉に対して加賀美がこのように話しかけている。

 「娯楽としてここにあるので、いま我々は」

 リスナーを楽しませるのが仕事という彼の考えは、すべてこの一言に集約されている。これには思わず葛葉も「こんなちゃんとした人もいるんですね」と答えるほど。何よりこの日は2019年10月31日、実は先ほどの話題にあげた「玩具で遊びまくるASMR配信」と同日のことである。デビュー当初から彼のエンタメへの姿勢・感度はブレることなく、「娯楽」であることに意識的だったのだ。

 加賀美は剣持刀也、不破湊、甲斐田晴らとともにROF-MAO(ろふまお)というユニットを結成。歌や音楽に定評のあった4人での活動ということもあり、音楽グループとして活動するのか?という期待があったなか、初配信で見せてくれたのは「数日間4人が無人島でサバイバル生活をしていた」というバラエティ企画だった。

 それも、2Dでも3Dでもなく実写映像。「バーチャル」という枠組みすらをも飛び越えていく動きは、視聴者や他の同僚らにも大きなショックを与えた。

 「他の追随を許さない」という言葉がある、フォロワーや後継者をも許さないほどに随一なオリジナリティを持つ者に与えられる言葉だ。1つだけの才能で飛びぬけて多くのひとを魅了する「天才」とは言えなくとも、様々なジャンル・分野などで秀でた才能をいくつも開花させ、多彩な才能を合成し組み上げることによって、「自分」という強力かつ特異な存在をつくりあげる。

 12月2日に加賀美ハヤトは30歳を迎えた。ボーカリスト、コメディアン、もしくはゲーマー、あらゆる才覚を混ぜ合わせながら、彼は無二のオリジナリティを手に入れようとしている。

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