PS5版『torne』、リリースの先にあるテレビ視聴・録画アプリの可能性

PS5版『torne』が示す視聴・録画アプリの可能性

 11月24日、PlayStation5版『torne』がリリースされた。

 ハードのローンチから約1年。待望されていた同アプリのリリースは、PlayStation5のユーザーにどのような体験をもたらすのだろうか。昨今の時勢から、新世代機に対応したレコーダーシステムの可能性を考える。

PS各機向けのテレビ視聴・録画アプリ『torne』

torne™ PlayStation®4 プロモーションビデオ

 『torne(トルネ)』は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)が開発・販売するテレビ視聴・録画アプリケーションだ。2010年3月、PlayStation3専用の地上デジタルレコーダーキットの一部として市場に登場し、何度かのアップデートを経て、PlayStation4や、PlayStation Vita、Vita TV、Android/iOSに対応。それぞれの本体ストレージを記録媒体とする、PlayStation各機向けの録画用ソフトとして一般化した。

 今回リリースされたのは、バージョン5.00以来のアップデートとなる新バージョン。2020年11月ローンチのSIEの新世代機『PlayStation5』に対応したものだ。公式によると、これまで好評だったコンセプトはそのままに、同機ならではの機能でより快適な視聴を楽しめるのだという。

 当初提供されていた『torne』では、地上デジタルレコーダーキット(アンテナ入力端子を実装し、地上デジタル放送用のチューナーとして利用できた)や、外部のレコーダーシステムと組み合わせることにより、単体でテレビ番組の視聴や録画、再生が可能だったが、今バージョンでは、同様の用途で利用するために「視聴再生機能」(税込500円)の購入が別途必要となる(アプリケーション本体はダウンロード無料)。2021年3月には、PlayStation5用の純正レコーダーシステム『nasne(ナスネ)』がバッファローより発売となっていた。PlayStation5対応の新バージョンのリリースにより、新世代機でもテレビ番組の視聴・録画・再生が可能となった形だ。

PS5版『torne』に吹く、“筋違い”の逆風

 PlayStation5を巡ってはこれまで、専用タイトルの発売、ソフトウェアのアップデート、抽選・販売の動向など、注目のトピックが現れるたびに、流通に対する不満が口にされてきた。今回のPlayStation5版『torne』のリリースも例外ではなく、ネット上では「欲しくても手に入らないハードに対応するのは無意味」といった声が散見されている。

 しかしながら、(当たり前のことだが)手に入らないことと、どのように活用できるかは切り分けて考えなければならない。なぜならPlayStation5は数量限定生産・販売ではなく、望めばいつかは手に入るハードであるからだ。

 本来大切なのは、「手に入ったとき、有意義な活用ができること」であり、そのためには、流通と同時進行、もしくは流通に先立って環境を整備していく必要がある。新ハードのローンチと同時に目玉タイトルをリリースするというような、いわば当たり前のことを感情的に批判するのは、筋違いと言わざるを得ない。

PS5版『torne』のリリースがもたらすもの

 PlayStation3版『torne』がリリースされた当時、ビデオゲームはテレビに出力するのが一般的だった。しかし最近では、PCなどとあわせ、テレビ視聴機能を持たないモニターへと映すケースが増えてきている。そうした時勢の中で新世代機に対応した『torne』は、私たちのAVライフに何をもたらすのだろうか。その答えは、テレビ・ゲーム機間の需要の変化の中にある。

 YouTubeや、VOD(ビデオ・オン・デマンド)などの台頭により、テレビ視聴の価値が低まる昨今、テレビは家庭に必ずある家電ではなくなりつつある。内閣府の発表する「消費動向調査(令和3年3月版)」によると、総世帯におけるカラーテレビ普及率は93.4%と依然として高い水準だった一方で、ゲームのターゲット世代と考えられる若い世代を世帯主とする世帯では、29歳以下が84.4%、30~39歳が89.4%と、9割を割り込んでいる現状だ。年度ごとに多少の増減はあるものの、概ね減少傾向にあるこの数字は、彼らにとってテレビが必ずしも暮らしに必要な家電ではなく、「たまに欲しい(観たい)と感じる」もしくは、「まったく所有する意味を感じない」程度の家電であることを示している。もし前者の層が現世代のゲーム機を所有していたとしたら。それらを活用し、必要なときだけテレビを視聴するという選択肢に、一定の価値を感じるに違いない。

 また、可処分時間の観点では、テレビ視聴の価値が低まったことで、相対的にビデオゲームをプレイする価値が高まったとも言える。総務省の発表する「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、コロナ禍の2020年、全年代におけるテレビ受像機の利用率は、前年から微増(96.1%→96.9%)だったのに対し、テレビゲーム機・携帯ゲーム機の利用率は、それぞれ23.1%から29.1%、21.7%から26.4%へと、はっきり増加した。テレビの利用率については元の数値が大きいため、増加が誤差の可能性もあるが、ゲーム機については、明確な価値の変化を受けた上昇と捉えられるだろう。



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