累・猗窩座が追加された『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』 “鬼”の参戦でゲーム体験はどう変わる?

 11月4日、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』に新たなプレイアブルキャラクター、累・猗窩座が追加された。

 発売前から無償アップデートでの追加が予告されていた累と猗窩座。彼らの参戦によって、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』のゲーム体験はどのように変わっていくだろうか。

 人気の鬼2体の追加が、同タイトルに与える影響を考える。

プレイアブルキャラクターの偏りが課題だった『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』

家庭用ゲーム「鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚」ソロプレイモード紹介・浅草編

 リリースが発表されてから詳細が明らかとなるまで、「対戦」の色が濃いタイトルになると予測されていた『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』。しかし実際には、漫画やアニメのストーリーを追うソロプレイモード『ヒノカミ血風譚』にも小さくない比重が置かれた、原作ファンには嬉しい1作だった。

 その一方で、対戦モードにおいては、「プレイアブルキャラクターの偏りが遊びの幅を減らす」といったネガティブな意見も噴出。どちらのゲームモードに重きを置くかによって、評価がはっきりわかれてしまっている残念な実態もある。

 同モードにはこれまで、18人のキャラクターがプレイアブルとして用意されていたが、そのなかに原作に敵として登場したものはおらず、うち3人が特徴の異なる竈門炭治郎、うち6人が「水の呼吸」の使い手、うち6人がスピンオフ作品『キメツ学園』から、という偏りぶりだった。本来、「対戦アクション」であることと同等、またはそれ以上に魅力と捉えられていたであろう『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』の“キャラゲー”の要素。ソロプレイモードの充実が称賛の対象となっている反面、ゲーム性の根幹である「対戦アクション」の部分は、プレイヤーの納得感につながっていないという一面もあるようだ。

待望されていた人気の鬼たちの追加。『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』のゲーム体験はどう変わっていくか

家庭用ゲーム『鬼滅の刃ヒノカミ血風譚』無償アップデート第1弾・“累”紹介映像

 そのようななかで追加された2人のキャラクター、累・猗窩座は、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』のゲーム体験をどのように変えていくだろうか。その可能性を探るうえで触れておかなければならないのが、初めてプレイアブルとなった“鬼”の仕様についてだ。

 これまで味方側の登場人物しか存在していなかった『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』では、対戦モードにおいて、2人のキャラクターがタッグを組み、共闘するシステムを採用していた。しかし、新たに登場した敵側の登場人物である鬼については、従来とは異なり、単独で戦う仕様となっている。アップデート前、多くのプレイヤーが期待した“ゲームならではの共演”ではなく、原作に忠実な世界観が優先された格好だ。

 こうした出自による仕様の区別には、懸念点もある。キャラクターごとの能力とあわせ、(共闘する味方キャラクター・単独で戦う敵キャラクターのあいだの)システム上の均衡も取らなければならなくなることで、バランス調整が難しくなるという点だ。もし全員がおなじ枠組みのなかで戦っているのであれば、シンプルな形でテコ入れをおこなうこともできただろう。関わる要素が多くなるほど、その構造は複雑になり、より“立体的”なチューニングが必要となる。容易だったはずのバランス調整が、“仕様上の非対称性”によって困難となりかねない実情がある。

家庭用ゲーム『鬼滅の刃ヒノカミ血風譚』無償アップデート第1弾・“猗窩座”紹介映像

 しかし、この“仕様上の非対称性”は、『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』のゲーム性に深みをもたらす可能性もある。“好き、もしくは強いキャラクターを2体選ぶだけ”だった対戦モードに、より戦略的なキャラクター選択の幅を与えるためだ。さまざまな対戦相手に対応するため、2体で弱点を補い合いながら戦える味方キャラクターを選ぶのか。それとも、(共闘と比較して)操作がシンプルで、単体でも戦える力のある敵キャラクターを選ぶのか。競技性の高い対戦ジャンルにおいては、こうした戦略的な要素も楽しみ方のひとつである。

 現状、揶揄の意味合いで“キャラゲー”と呼ばれることも多い同タイトルが、「原作の評判にぶらさがるコレクション的作品」という立ち位置ではなく、ゲーム作品単体として“良ゲー”と認められるためには、対戦モードまわりの安定と盛り上がり、充実、拡張が必要なのは間違いない。累・猗窩座の追加に、“ピンチ”を打開するだけのポテンシャルを感じるのは私だけではないはずだ。

 運営によると、今後も2度にわけて、計4体の鬼が無償アップデートで追加される予定だという。まだまだ課題も多い『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』だが、“良ゲー”となる可能性はまだ十分に秘められていると言えそうだ。

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