『Switch有機ELモデル』発売で再燃する転売問題  転売ヤー“爆死”の裏で考えるべき、たった一つのこと

『Switch有機ELモデル』発売で再燃する転売問題

有機ELモデルの転売騒動が表面化しない2つの理由

 いったいなぜ、Nintendo Switch旧モデル・PlayStation5で起こったような転売騒動が、Nintendo Switch有機ELモデルでは表面化していないのだろうか。そこには、2つの理由がある。

 1つ目は、有機ELモデルが完全に新規となるハードではない点だ。Nintendo Switchからは過去に、据置型のスタンダードモデル、携帯型のNintendo Switch Liteの2機種が発売されており、対応ソフトはすべて有機ELモデルでなくてもプレイできる。そのため、新モデルの仕様に魅力を感じなければ、旧モデルでも十分であり、あえて高額な転売商品を買ってまで手に入れる必要性が薄いのだ。

 2つ目は、Nintendo Switchがすでにひと通り普及しきっており、「欲しいけれど、まだ持っていない」という消費者が限られる点である。

 Nintendo Switchの国内における販売台数は、2021年6月時点で2,000万台以上となっている。老若男女すべて含めた日本の総人口の6人に1人ほどが持っている計算だ。特に昨年からのコロナ禍では、巣ごもり需要が伸び、同ハードが爆発的に普及した。昨年の転売騒動はこうした時世を受けたもので、一段落した現在では、(経済的な事情を除いて)欲しいと考える消費者全員に行き渡りつつある現状がある。

 実際に、ネットショッピングサイトのAmazonでは、スタンダードモデル・Nintendo Switch Liteの両方がメーカー希望小売価格で販売されている。1つ目の理由で述べたように、新モデルでなければならない理由が少ないうえ、旧モデルが普通に手に入ること。この2点によって需給のバランスが崩れ、「それほど価格が高騰しない」「出品過多により、在庫が飽和する」といった状況が生まれているのではないだろうか。

転売が映し出す消費者のモラル

 とはいえ、消費者からは、そもそも転売業者の手に渡らないような販売システムを構築すべきという声も大きい。たとえば、各プラットフォーマーが発行するオンラインアカウントの稼働状況を精査し、実態・実体のあるユーザーに購入権を付与すれば、転売目的の人間には行き渡らないはずという意見がある。

 一方で、転売がなくならない理由には、欲しさのあまり、多少高くても買ってしまう消費者が後をたたない点も挙げられるだろう。メルカリにおいて、5万円ほどが取引成立の境界となっていることを考えると、+12,000円ほどであれば、モラルや不当な出費より欲望が勝るという消費者の本音が見えてくる。

 私の周囲を見るかぎり、昨年のNintendo Switch旧モデル・PlayStation5のときほどではないと感じるNintendo Switch有機ELモデルの競争率。転売行為そのものが褒められたものではないことはもちろんなのだが、撲滅のためには、メーカーや販売店の工夫とあわせ、購入者のモラルも問われ続けていくだろう。

 これから先、いくら販売システムが成熟したとしても、転売がゼロになることは考えにくい。ゲーム業界の慣例となりつつある同問題は、販売者でもあり、購入者でもある消費者のモラルを映し出しているような気がしてならない。

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