あの有名絵画に偽物判定 AIを活用した作品分析の技術革新が進む

 9月30日、10月1日の2日間で開催された、毎年恒例のテック系イベントTNWカンファレンスにて、AIを使用してアートの謎を解き明かす方法が示された。本テーマで公演したのは、アムステルダム国立美術館の科学者兼、アムステルダム大学の教授のロバート・G・エルドマン氏だ。

 昨今、世界中の美術館がAIを使用して、絵画の真贋を判定したり、作品の分析などを行っているが、同美術館は特にAI利用に力を入れている。

 エルドマン氏によれば、オランダの銀細工師、アダム・ファン・フィアネン(1568 - 1627年)が制作した水差し「Lidded ewer」の5分間の紹介動画を作成するのに、1000枚もの写真を撮影したという。ただ高解像度での再生にはフレームレートが足りなかったため、AIで動画に上から画像を挿入し、解像度を上げたのだそう。

「Lidded ewer」|アムステルダム国立美術館より

 別のプロジェクトでは、AIを使用して、インクがのった古い紙の透かしを識別した。そしてその透かしを分析し、製紙業者の起源を突き止めることができたという。

 そのほか最近話題となったのが、レンブラント・ファン・レイン(1606 - 1669年)のトリミングされた「夜警」を復元するプロジェクトだ。同作を9つの異なる手法で撮影し、本物と模写とを比較するなどして、レンブラントの描画スタイルを分析。ついには元の姿を取り戻すこととなった。

アムステルダム国立美術館より

 また先月には、ロンドンナショナルギャラリーに所蔵されているピーター・ポール・ルーベンス(1577 - 1640年)の「サムソンとデリラ」が、AI分析の結果、91%の確率で偽物だと判定されたことも、アート界隈を騒がせている。同館は真贋についての正式な見解は発表していない。

「サムソンとデリラ」|ロンドンナショナルギャラリーより

 今後さらなる技術革新によって、これまでの常識がくつがえされるような真実が出てくるかもしれない。

(画像=アムステルダム国立美術館より)

■堀口佐知
ガジェット初心者のWebライター兼イラストレーター(自称)。女性向けソーシャルゲームや男性声優関連の記事を多く執筆している。

〈Source〉
https://www.rijksmuseum.nl/en
https://thenextweb.com/news/amsterdams-rijksmuseum-using-ai-to-unlock-new-artistic-mystery
https://thenextweb.com/news/ai-suggests-peter-paul-rubens-did-not-paint-samson-and-delilah

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