修復で原型を失いつつある絵画を再修復すると、“偽”の笑顔が消えた

絵画の再修復で“偽”の笑顔が消える

 過去に行われた修復と経年劣化によって原型を失いつつあった16世期の絵画が、再修復で本来の姿を取り戻した。

 本プロジェクトを手がけたのは、英国の歴史的遺産の保護団体、イングリッシュ・ヘリテッジだ。同団体の分析によって、この絵はこれまで考えられていたよりもはるかに古く、16世紀のフランドル地方の画家、ヨアヒム・ブーケラールの作品である可能性が高いことも明らかとなった。

 団体員のアリス・テイト・ハルテ氏は、「ニスが黄ばんでいて絵はかなり汚れていた。また非常に多くのオーバーペイント(塗り重ね)があったので、本来の美しい姿ではなかった」と振り返り、「笑顔は元の絵と大きく異なる部分だ。私が思うに、彼女はもっと真剣な表情をしているはず」と述べた。

ENGLISH HERITAGEより
イングリッシュ・ヘリテッジによる修復前の絵画|ENGLISH HERITAGEより

 米メディア『The Guardian』は、「過去の修復師はおそらく、オランダの野菜売りはあまりにも不機嫌に見えるので、微笑ませるべきだと判断したのだろう」と茶化している。

 さらにこの絵の背景の空と塔も、あとから追加された可能性が高いという。キャンバスを横長ではなく正方形にするために、19世紀頃に加筆されたようだ。おそらく、作品を正方形の額縁に合わせるためと見られている。

 ハルテ氏は、「絵画に新しく背景を付け足すなんて、クレイジーなことだ。ぴったり合う額縁を見つければいいのに。しかし、このようなことは当時とてもよく起こっていた」と述べている。「19世紀には作品保護のルールが確立されていなかったので、人々は今より自由に作品を扱っていた」。

ENGLISH HERITAGEより
ENGLISH HERITAGEより

 作られた笑顔と余分な背景が修復され、絵画は元の姿を取り戻した。現在は、観光地化された英国の邸宅、オードリーエンド・ハウスに展示さている。

 レンブラントの「夜警」も、18世紀に市庁舎の壁のサイズに合わせて切り取られており、名画であっても過去にはさんざんな扱いを受けたことも。近年の修復技術と作品保護意識の向上に、画家たちもホッとしていることだろう。

(画像=ENGLISH HERITAGEより)

■堀口佐知
ガジェット初心者のWebライター兼イラストレーター(自称)。女性向けソーシャルゲームや男性声優関連の記事を多く執筆している。

〈Source〉
https://www.english-heritage.org.uk/about-us/search-news/pr-the-vegetable-seller/
https://www.theguardian.com/culture/2021/jul/16/restoration-work-wipes-smile-off-the-face-of-dutch-vegetable-seller

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