KAITO15周年を祝うボカロファンの祭典 感動の『初音ミクシンフォニー2021』横浜公演をレポート

『初音ミクシンフォニー2021』横浜公演レポ

 昨年、コロナ禍のなかでも5周年の輝かしいステージを成功させた『初音ミクシンフォニー』。「ボーカロイド」と「オーケストラ」という異なる音楽ジャンルを結び、2016年の初開催以来、多くの観客を魅了してきた同コンサートは、10周年に向けた新たな一歩を踏み出した。


 そして迎えた2021年9月20日、『初音ミクシンフォニー2021』の横浜公演(パシフィコ横浜国立大ホール)が開催された。ボーカロイド「KAITO」の15周年を祝う祭典にもなった、本公演の模様をレポートしたい。

 ボーカロイドたちがひとりずつ登場する美麗なオープニング映像で、「ようこそ、『初音ミクシンフォニー』へ」と開幕を告げたのは、この日の主役・KAITO。冒頭は「カンタレラ」(黒うさP)から「サンドリヨン」(Dios/シグナルP)と、KAITOと初音ミクによるデュエット曲が続けて演奏され、観客を物語の世界に引き込んでいった。

 栗田博文が指揮を振る東京フィルハーモニー交響楽団の演奏は一糸乱れることなく、この日も惚れ惚れする仕上がりだ。そして、KAITOの朗々とした、大らかな歌声はオーケストラに映える。こちらも10周年の節目を迎えた「ミクダヨー」、そして「カイトダヨー」が可愛らしいダンスで華を添える、楽しいスタートとなった。

 サンドリヨン(シンデレラ)の世界から、わがままな“おひめさま”に観客も振り回される「ワールドイズマイン」(ryo(supercell))へ、という繋ぎも心にくい。この日の公演は普段にも増して映像での演出が多く取り入れられており、たびたび、最高峰の生演奏とともに舞台を楽しんでいるような感覚になった。


 さらに続くのは今年、投稿10周年を迎える「千本桜」、そして「上弦の月」と黒うさPによる和テイストの人気曲。お馴染みの「千本桜」はもちろん、「上弦の月」は管弦の繊細なアレンジが情感を高め、切なくあたたかなKAITOの歌唱と相まって、本公演のハイライトのひとつとなっていた。オーケストラ演奏によって魅力が増幅し、観客によっては新たなお気に入りの一曲を見つけることができるのも、『初音ミクシンフォニー』の醍醐味だ。


 そこから「リモコン」(じーざす(ワンダフル☆オポチュニティ!))、「劣等上等」(Giga)と、鏡音リン・レンのやんちゃなイメージが活かされた弾けた楽曲を挟むなど、2021年の『初音ミクシンフォニー』は、本当に見どころがつきない。


 続くのは、「ワールズエンド・ダンスホール」(wowaka)、「ルカルカ★ナイトフィーバー」(samfree)と、いまは亡きふたりの天才クリエイターによる、決して色あせない名曲が演奏された「巡音ルカ特集」だ。身体中に響く音の振動とともに、思わず目頭が熱くなった。直後に披露された「タイムマシン」(164×40mP)も含めて、ひとつの物語を紡いでいるようにさえ思える内容だ。

 休憩を挟んだ後半も、観客の心を揺さぶる名演が続く。横浜公演限定の演奏となった「Reboot」(ジミーサムP)は、多くのファンの涙を誘ったドラマ性の高いMVとともに披露され、一際大きな拍手を受けた。


 そしてここから、ビッグバンド編成のジャジーなステージへ。halyosyの「あったかいと」から、「ドクター=ファンクビート」(nyanyannya)へ、KAITOというキャラクターとジャズの相性のよさを感じさせる人気曲につなぎ、さらに大人の色気あふれる「ピアノ×フォルテ×スキャンダル」、またスマートフォンゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』への書き下ろし楽曲であり、もともとジャズアレンジが効いた「ニジイロストーリーズ」と、OSTER projectの人気曲に体を揺らす、贅沢な時間が続いた。


 ボカロシーンを追いかけてきたファンとして嬉しかったのは、本編の最後に、「シネマ」(Ayase)、「トンデモワンダーズ」(sasakure.UK)という、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』収録の最新曲がメドレーで演奏されたことだ。Ayase率いるYOASOBIをはじめ、メジャーの音楽シーンでもボカロ文脈のアーティストが大ブレイクを果たし、再び脚光を浴びているなかで、『初音ミクシンフォニー』が“名曲を懐かしむ”ためのコンサートに止まらないことを強調していた。

 11月20日に神戸国際会館 こくさいホールにて初の神戸公演を控えているなかで、アンコールについての詳細は省くが、最後の一曲は公開が予告されていた、KAITO15周年記念の書き下ろし曲にして、本公演のテーマ曲「怪人」(Dios/シグナルP)。「怪人」と書いて「かいと」とも読める、この”哀しい愛のうた”は、ボーカロイド総出演による壮大なオペラに仕上がり、世界最高峰のオーケストラが“映像と物語”とともに紡いだ本公演を締めくくるにふさわしい一曲となった。


 驚くべき濃密さで、あっという間に終演を迎えた『初音ミクシンフォニー2021』横浜公演。『初音ミクシンフォニー』はオーケストラコンサートには珍しく、歓声や笑い声が絶えないのも特徴だが、今回の公演はコロナ禍への対応もあり、“観客参加型”のニュアンスが抑えられ、演奏と映像に深く引き込まれる構成になっていたように思う。ボカロ曲が持つ個性や楽しさはそのままに、静謐で深い感動のあるコンサートを作り上げたオーケストラとスタッフに向けて、観客からは大きなスタンディングオベーションが送られた。

初音ミクシンフォニー2021

https://sp.wmg.jp/mikusymphony/

【横浜公演】
2021年9月20日(月・祝) パシフィコ横浜 国立大ホール
17:00開場/18:00開演
【神戸公演】
2021年11月20日(土) 神戸国際会館こくさいホール
17:00開場/18:00開演
公演に関するお問合せ:
キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日・土曜 11:00~16:00)

指揮:栗田博文
演奏:【横浜公演】東京フィルハーモニー交響楽団 【神戸公演】大阪交響楽団
MC:初音ミク 他
神戸公演チケット好評発売中‼
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/mikusymphony21/
ローソンチケット:https://l-tike.com/mikusymphony21
イープラス:https://eplus.jp/mikusymphony21/

初音ミクシンフォニー2021横浜公演のBlu-ray&CDが2022年2月2日(水)発売決定‼
https://mikusymphony.lnk.to/2021

© Crypton Future Media, INC. www.piapro.net
「VOCALOID(ボーカロイド)」ならびに「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。

セカイシンフォニー

https://sp.wmg.jp/sekaisymphony/

■『セカイシンフォニー』とは?
美しく響く音の祭典——『セカイシンフォニー』
プロセカに収録されている楽曲たちをオーケストラ+スペシャルバンドで奏でるコンサート

2021年10月16日(土) パシフィコ横浜 国立大ホール
【昼公演】13:00開場/14:30開演
【夜公演】17:30開場/19:00開演
公演に関するお問合せ:
ディスクガレージ 050-5533-0888(平日12:00~15:00)
https://www.diskgarage.com/form/info

指揮:栗田博文
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団・セカイシンフォニースペシャルバンド
スペシャルゲスト:廣瀬大介・Machico
チケット好評発売中‼
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/sekai-symphony/
ローソンチケット:https://l-tike.com/sekai-symphony/
e+:https://eplus.jp/sekai-symphony/

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