Appleは2019年からiCloudメールをスキャンしていた。広がる児童虐待対策システムへの懸念

iPhoneより安全なデバイスとは?

 CNETも23日、児童虐待対策システムを特集した記事を公開した。この記事では、同システムが開発された背景を解説している。アメリカにおける児童虐待問題に取り組む児童の失踪と搾取のための国立センターは2020年、6,500万件もの通報を受けた。20年前には同様の通報は401件に過ぎなかったことを考慮すると、インターネットやスマホのような通信技術の発達により急激に児童虐待問題が深刻化しているのがわかる。

 児童虐待問題の深刻化を受けて、GoogleやFacebookといった大手テック系企業は自社のクライドサーバに児童虐待関連コンテンツがあるかどうかをチェックしている。こうしたチェックをAppleも行っていたのは、前述した通りだ。児童虐待関連コンテンツの検出は、やむを得ない対策とも言える。

 Apple製品専門メディア『Macworld』が24日に公開したコラム記事は、Appleの児童虐待対策システムは相対的に信頼に値するものと主張している。多くのメディアが論じているように、同システムには確かにユーザのプライバシーを侵害するリスクがあることを否定できない。それでは、同システムが運用されるiPhoneを手放せば問題は解決するだろうか。

 仮にiPhoneを手放してAndroid端末に乗り換えたとしても、ユーザのコンテンツがチェックされるリスクは残り続ける。さらに言えば、プライバシー保護に関してはAppleが競合他社よりユーザに配慮しているのも事実である。ゆえに、児童虐待対策システムへの懸念はiPhoneを手放したところで解決するわけではなく、かえって状況が悪化することもあり得るのだ。

 Appleの児童虐待対策システムに対する一連の懸念は、結局のところ、防犯とプライバシーの保護はトレードオフの関係にあるという現代社会が抱えている問題に根ざしたものなのだ。児童を犯罪から守るために、どの程度であればプライバシー保護に対するリスクを許容するのか、という議論がアメリカだけではなく日本を含めた全世界で求められるだろう。

トップ画像出典:Apple「Expanded Protections for Children」より画像を抜粋

〈Source〉
https://9to5mac.com/2021/08/23/apple-scans-icloud-mail-for-csam/
https://www.phonearena.com/news/apple-csam-system-scan-photos-child-abuse-princeton-researchers-call-out-dangers_id134501
https://www.cnet.com/tech/services-and-software/iphone-privacy-how-apples-plan-to-go-after-child-abusers-might-affect-you/
https://www.macworld.com/article/353870/macalope-apple-privacy-policy-android-csam.html

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